誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ31)

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14.味方という名のお守りページ31

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「本気度、とも違うんでしょうけど、この舞台にすべてを懸けているように見えて。さっき話した空蝉が横になって話すところとか。あれは本当に枡川さんにしか出来ないと私は思っています」

でも、と金城さんは少し難しい顔をしながら続ける。

「だからこそ変に目立つ可能性もあって、枡川さんをよく思わない人がいる可能性だってあります」

何となく知らんぷりしてたけど、良い加減向き合わないといけないかもしれない。

正門さんも金城さんも、どちらもたまたま私に偏見を持たなかったから良いものの、ここにいる全員がそうだとも限らない。
それこそ舞台女優さんなんかからすれば、監督から指摘ばっかり受けている私は迷惑でしか無いだろう。

なるべく平穏にと思ってはいたけれど、ちょっと難しくなってきたかも。

「……そう、ですよね」

「でも私は、少なくともそう思っていないです」

初めて金城さんをテレビで観たのは、高校生の頃放送されていた学園ドラマのヒロイン役。
名前の通り凛とした姿で、同じ部の先輩に告白するシーンが印象的だった。

今目の前にいる彼女の姿は、シチュエーションは違うけどそのシーンと重なって見える。

「直接的な指摘はなくても、枡川さんへの指摘は私にも言えることです。勉強になることばかりで、迷惑どころか私はむしろ感謝しています」

「金城さん……」

「さっき言いましたけど空蝉が合うのは枡川さんだけだって思ってます。……本当に癪ですけど、正門さんも多分同じことを思っています」

「……え？」

私を見つめる金城さんは、正門さんとは異なるまっすぐさを持っているようで。

ここまで考えをストレートに言えるなんて、ちょっと羨ましくもある。

「昨日の読み合わせのあの瞬間から、私は声優、枡川Aさんのファンです」

ファンの方からの手紙での言葉もそうだけど、自分のことを好きだと、応援してると言ってくれる人からの言葉は何故こうもスッと心に入ってくるんだろう。

一時のぶつけられたその言葉に、想いに、身を委ねたくなってしまう。

信憑性なんかどこにも無いのに。

そこに絶対なんか無いのに。

いつか離れていくって心の隅では理解してるのに。

けれど今目の前にいる彼女の言葉は、絶対大丈夫だって、安心できるって。
裏付けも無いのに不思議とそう思えてしまう。

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