誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ28)

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「で誰が受かったんだって香盤表見たら、全く知らない人でしたし」

「あはは……」

そりゃあ声優だし新人だから、普段ドラマで活躍されている方がご存知ないのも無理はない。

そういえば。

「空蝉受けたのって、普段演じられる役柄と近いからですか？」

「まあそれもありますけど、もっと大きい理由があって」

「はい」

「唯一と言って良いくらい、光源氏との関係性が薄いじゃないですか。他は正妻とか愛人とか、そんな肩書きがありますけど」

確かに葵上は正妻、六条の御息所や夕顔は愛人、藤壺は初恋の相手……と光源氏との関係を単語で表せる。夕顔はこれに加えて頭中将の元正妻。しかしながら空蝉にあるのかと聞かれると微妙なところ。
人によっては、追々愛人になりそうとかいうかもしれない。

「それに問題が……？」

光源氏との絡みは確かに少ない＝正門さんと絡むシーンが少ない、ってことにはなる。
けど彼がアイドルだって知ったのは今日っぽいし。

「役同士が恋人とか夫婦とかってなって、そのお相手と今度は別の関係性で共演とかってよくあるんですけど」

「はい」

「1度そうなると別作品で共演した時にそういう目で見られるんですよ……。あの二人付き合ってるんじゃないかって」

「……」

「ちなみにこないだ、昔恋人役をやったある俳優さんと幼馴染役ってので再共演することになったんですけど、その決起会の時週刊誌に付け回されました」

「うわあ……」

「だからなるべく主人公とかと恋愛関係にある役は避けたかったんです。今後共演した時面倒くさくなるので」

特にこういう作品ではね、と金城さんは続けた。

女優さんにもそれなりの苦労があるらしい。
確かに1度恋人役をやったからって、本人同士もそうなのかって疑われるのは演者として気持ち良くはないだろう。

こっちでは大きい作品で共演ってなってそのあとゴールインしたというのはよくある。ちなみに役柄はあんまり関係なかったりする。

「そういうのがあって空蝉受けたんですよ」

「そうだったんですね……」

「しかも相手はよりによってアイドルだし……本当に詰んでますよ私」

やはり男性アイドルは苦手なのか、ちらりと向こうにいる正門さんに一瞬だけ目線を移したかと思うとまた怪訝そうな顔をした。

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