誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ24)

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11.気持ちを整えて。ページ24

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あんな風に初対面の人と話せたのが楽しかった。

些細な変化に気づいてくれたのが嬉しかった。

言語化したことで、昨日得た初めての感情がまとまっていくのが分かる。

本来感情の呼び起こしは最低でも5年前のものが良いとされているけれど、あんまりプラスなことを覚えていない私には難しい。むしろ新鮮さがあるからこそ、どんどん欠けていたところにはまっていく。

今目の前にあるのは、昨日事務所でもらったオーディション原稿。あと電子版の原作漫画。

主人公のセリフは、一目惚れしたときのモノローグと初めてその男の子と話せたときの嬉しさ全開の発狂。
あとツッコミ台詞。

昨日マネージャーさんによって得た気づきはどちらかというとこっち向きかもしれない。

空蝉はマイナス……というか拒否感情が強いからなあ。もちろんそれは建前で、本音はより複雑なんだけど。
ツンデレっていうと意味は違ってくるけれど、本音を言っていないってことではかなり近いはず。天邪鬼って感じでもないし。
一言でこう！って表せない性格なんだよなあ。

けれどそのごちゃごちゃな本音の中に、少しは昨日得た感情が入っていても不思議ではないわけで。
これを活かさない手はない。

録音提出は来週。まずはそこに向けてプランを決めよう。

「「あ……」」

「おはようございます」

「おはよう、ございます……正門さん」

稽古場に着くと、既に正門さんの姿があった。
昨日と違い長袖のシャツ一枚。それでも寒いと思う。暑がりと彼は言っていたけど、風邪をひかないのか心配になるレベルだ。

昨日の時点で薄々感じてはいたけど、今確信した。彼はとてつもなく真面目だ。

そうじゃなかったら一番に来ないだろうし、手に台本を持って1人で立ち稽古するはずもない。

「早いですね、枡川さん」

「そう言う正門さんこそ……1番乗りじゃないですか」

「前のお仕事が早く終わったんですよ、でもどっかで休むには微妙やったんで」

「そうなんですね……」

前のお仕事、となると関西のかな？
仮にそうだとすると、昨日大阪に帰って今朝仕事をして、そのままこっちに来たってことか。

……アイドルも体力勝負なのかも。

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