誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ3)

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2.理想と、現実ページ3

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「源氏物語ですか」

「そう。確かブログで書いてなかったっけ？好きなものとかその辺の話で」

「あー……多分インタビューですかね。確かに好きです」

あれは私の名前が業界に広まり始めた頃だったと思う。

事務所の意向で個人でSNSをやっていない私にとっては、『声優枡川A』を知ってもらえるチャンスだ！と意気込んだことを覚えている。

その時のインタビューで、源氏物語とか百人一首……所謂古典文学の話をした。今思えばあのインタビュアーさん、ちょっと引いていたような気もする。

「……誰が良い？」

「選ばせてもらえるんですか？」

「一応ね」

「えっと……」

今回の舞台では紫の上の登場の前まで公演予定らしい。原作で言う夕顔まで。好評だったら続編をやるってことかな。
とはいえ紫の上だって登場時点で10歳前後のはず。せめて登場するとしたらもうちょっと成長してからの方が良いのでは。

ともかく、ここまでで出てくる女性となると、桐壺の更衣、藤壺、六条の御息所、夕顔など。要項にもその役名が記載されていた。
桐壺と藤壺は同じ人がやるのか。

弘徽殿の女御も記載されているけれど、さすがに今の私からは遠すぎる気がする。
普段の私に近いとなると葵上かな、でも結ばれた後に生き霊に殺されるのはなあ……と考えていたところ、ある名前が目に飛び込んできた。

「空蝉……」

あまり有名ではないけれど、それでも人によっては印象に残る女性の1人。

中流貴族の後妻という立場上、アプローチをしてくる光源氏を冷たく跳ね返しながらも、少しずつ彼の魅力に惹かれていってしまうというジレンマを抱えている女性。空蝉は夫の死後出家しちゃうけれど、後ろ盾のない彼女を光源氏が引き取るっていうラストがある。

途中で結ばれてしまうけれど、他と違うのはその後の光源氏のアプローチを跳ね返す点。
決して流されてたまるものか、という意志の強さが垣間見えてとても好感が持てる。女としては憧れる強さ。