誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ13)

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「じゃあそろそろ再開します」

監督のその声で、私もスイッチを入れた。

絵巻でいう箒木。この時点で光源氏は葵上と結婚している。藤壺はまだ懐妊していないはず。会話上ではあるけど夕顔の名前も出てくる。

なお当時源氏は17歳。近衛中将という役職に就いていたらしい。

ここの始まりは雨夜の品定め。男達の恋バナみたいなもの。そこで光源氏が中流階級の女性の魅力を知ることになる。

言われる側は溜まったものじゃないだろうな。

「中将殿はどうなんですか？」

「俺は……昔、内気で、けれどもとても素直な女性と出会った。とても素直な良い人だったし娘も生まれたんだけど……実は、今どこにいるのかわからないんだ」

「えっ！」

「子供まで産まれたのにですか？」

「ああ、未だ理由は分からない。……特に変わったところは無かったんだがな」

「心変わりとか？」

「さあな。まあ俺のこの経験を踏まえると、器用な女が結局は1番だろうな。何かこう、俺達の女遊びでさえも本気に捉えない程度に妬く人がいいな」

「あー。それで言ったら私は、世間付き合いが上手な人が良いですねえ」

……本当に溜まったものじゃない。

「源氏もあれだな、同等の身分だけじゃなく、中流層の女性も知っておいた方が良いかもな」

「……なるほど」

隠れた魅力があるんだよ、と頭中将の言葉を皮切りに、源氏以外舞台から捌ける。

翌日、方違えもあり昨日も話もありで紀伊守邸へやって来る光源氏。そこで彼の継母である空蝉の存在を知り、興味を持つ。

「……ここに、紀伊守の継母が」

彼女の寝ている所へ向かい、空蝉と女房の会話を覗き聞きする源氏。

……いよいよ、出番。

「ねえ、中将は何処にいるの？」

「彼女はお湯に入りに行きましたよ」

「……そう。知らない殿方がいらっしゃるらしいから、誰かそばに居てくれないと不安なの」

「すぐに戻ってくると申しておりましたので、大丈夫ですよ」

実際この場では空蝉は寝ながら話している状態だが、今日は読み合わせのため椅子に座りながら。

ここの気持ちは言葉通り不安。噂しか聞いたことがない知らない人が同じ敷地内にいるという事実が、空蝉を襲っている。けれども同時に眠くてしょうがないのもまた事実。その狭間を行ったり来たりしている状態。

だから、誰かが入って来ても抵抗しきれない。

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