黎を帯びて ページ46
静乱(今日、此処は閉鎖される。)
そうなってほしい。否…されなければ、私は先生に顔向け出来ない。
フィフスセクターが企てる極秘プロジェクトの終焉を見届ける。これが学院を去る日、叔父様から私に課せられた任務。
だけど…本当にこのまま、彼等の成長を見届けるだけなのか。それだけで良いのだろうか？
そう思い悩む中、ガサリと草木の揺れる音が聴こえた。
背後へ目を向け窺えば、覇気を感じ取れない松風天馬が茂みから出て来る。
此処なら誰も居ないだろうと予測したのだろうか？
彼は私の姿を視界に捉えた瞬間、暗澹とした表情が驚きへ染まった。
此処―――海を見渡せる、景色の好い崖。彼がクライミングした場所でもある。
現在地から日の昇り具合をひと目見知ってしまうと、不思議な事に景観が湧くものだ。
それに遮蔽物の無い展望が効くこの地点ならば、不安に侵されドンヨリと沈んだ彼の
なにより少年の不安の種に見当がつく。
静乱「……彼が心配か。」
ハッと自分から伺ってみては失言だと数秒間で後悔する。
やはり私は、年下を目の前にしてしまっては干渉せずには在れないのか…。
己の呆れ様に目を伏せると、胸を突いた壁山さんの激励が脳内で再生された。
私がココに居る事が先生の望みを叶える事に繋がる。先生の為に任務を遂行する。先生の笑顔の為に私は在る。先生に不要とされる日まで、拒絶される日まで、私は先生の傍に在り続ける。
いや…違う。
確かに私は先生の望みを叶える為、雷門イレブンと行動を共にしている。
だけど彼等と会話を交わす度に溢れる余計な情。その原因は紛れもなく、彼女が―――
……見付けた。
ワタシが海を見据えた。
まるでこの行動が合図かのように、日は昇り始め水面にオレンジ色が灯ってゆく。
再びこの地で朝の陽を浴びれるとは…言わずもがな、だな。
何気に他意無く横へ視線を戻し様子を見た。
あまりの絶景さに感銘受ける一方、心配が残る眼の松風天馬。
気分も優れたワタシは腰を上げ立ち上がる。
仕方ない。今回は特別、勧告してやろう。
静乱「此れだけ、忘れるな。勝利の女神は―――」
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作者名：暗明 | 作成日時：2022年10月26日 19時
