本来在るべき人格／前篇 ページ34
？？「……出ておいでよ。」
忽然にもこの言葉で肩が揺れた。
先輩？の発言の後、暫し二人だけの空間に沈黙が続く。
耳に入るのは木々の葉や草木を揺らがす風の音。
俺は2分くらい姿を現すのを躊躇して、でも意を決して木の後ろから出、三歩程先輩の方へ歩みを進めた。
？？「君は…。ｸｽ…眠れない？」
てっきり、深夜だろう時間帯に外に出ていることを叱られると思っていた。が俺の思い違いだったよう。
まぁ寝床へ戻ったとて眠れないことはないケド…取り敢えず頷いておく。
それを肯定と汲み取った先輩らしき人に「夜更かしさん」と
それから先輩は俺の方へ足を進めて来る。
向き合うカタチになったと思えば、先輩は俺の右頬に自分の右手を添え、黒手袋の上から目元のナニカを拭った。
下ろされた黒手袋の指先に乗っかるのは透明な水。
どうやら知らぬ間に、俺の目頭に涙が溜まってたみたいだ。
途端に先輩が訊き忘れていたと先ず前置きをし、そして俺は尋ねられる。
？？「怪我は？」
狩屋「ぁ…え、っと。」
何かしら反応は返したい俺は、今一度軽く身体を動かしてみた。何処も痛まない。
この間際にチラと先輩を窺ったところ、ユニフォームが捲れ見えた包帯に先輩の顔は歪められた。
ご想像通り、包帯は創傷部に塗られた薬剤のズレ防止の為に巻かれている。
所々見える痣は自分でも痛々しく思うものの、なによりも意外だった点が一つ。
別人かも知れないが、先輩はちゃんと人間性を持つ俺等と何ら変わらない
そこまで認識した俺は頭を左右に振って胸に抱いた事を払い除ける。
何処も痛まないことを伝えたら表情筋をフワリと綻ばせ、「君に大事なくて良かった」と安堵後、はにかむ目の前のその人。
ぅ〜ん、やっぱ俺等と居る普段の先輩とは格段に物腰云々らしからぬ。
まさか別人…？！
俺の疑問はお見通しなのか、先輩と異なる雰囲気を纏う人は言う。
？？「私はね？この子…静乱ちゃんが封じた、
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作者名：暗明 | 作成日時：2022年10月26日 19時
