その少女、生徒会長につき (ページ23)

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想定外の事態　※ ページ23

円堂「よし、此処まで来れば追って来ないだろ。」

そう円堂は周囲を見渡し言う。
円堂達の言葉に促されるまま、数名を抱えて洞窟へと訪れた静乱。
彼女も又、五感を研ぎ澄まし気配の察知を試みた。

静乱(……？)

風丸「一先ず手当てを。」

風丸の発言に一同は頷き、其々の箇所へ少年達を運ぶ。
中はまぁ広々としており、人数分の寝床は確保済。
各段に2名と3名程に分け多数の怪我人を横に寝かせる。
円堂等大人は一人一人の怪我の具合を診、最低限の応急処置を施していく。

一方で静乱は或る人物の容態を手探りで診ていた。
重症とまでは行かずとも、何れにせよ放って置くと選手生命に支障を来す。
静乱は思考を巡らせ、疾走中に立ち寄り流水場から汲んだ冷水をタオルに濡らす。
持ち上げた直後に水気を切り、負傷した所々に濡れタオルをポンポンと宛てがう。
その作業を終えれば自身の所持品の一つ…ハンカチを取り出し、裸体に浮かぶ少量の水分を拭き取った。
仕上げに一風変わった消毒液を手足の傷口へ垂らす。
次いで足許(あしもと)に用意して置いたガーゼで膝や肘に巻いていき、太めなホワイトテープを一周させて貼る。
最後に傷だらけの上半身を包帯で巻き付けてく静乱。
そうして残った軽傷な部分は簡易的に処置を施してった。

全員「ふぅ…。」

静乱と円堂達は処置の作業が一段落すると溜めていた息を吐く。
けれど秘かに静乱だけ眼前に横たわる、少年の肺や気管を気に掛けていた。
静乱は数分前の試合風景を改めて振り返ってみた。
少し冷静に考えるが結果、処置の間に何も起こらなかった事実が静乱の危惧(きぐ)を募らせてしまう。

静乱(まぁ、対応に遅れを取らなければ問題ナシか…。)

こう思った矢先に少年…狩屋マサキは、喀血(かっけつ)した。
場の温度は氷点下へ。
静乱は視線を受けながら、彼が血を吐く原因を瞬時に理解。
直後、喀血者が居ると云うのに、「一寸の惑いや失敗は許されない」と幾度も脳内を木霊する声。
やがて静乱は或る人物に教わった処置法で場を凌ぐと決し、颯爽と準備に取り掛かった。