重なり想うイマージュ (ページ8)

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「賢者様…！」

　扉が開かれたと思えばそう耳に入ってきた。ふむ。この気配は普通の人間か。エレベーターから降りると、自身が置かれた状況をイヤでも把握した。加えて鮮明に今から起こる展開が読み取れた。

「賢者様がいらっしゃったぞ！魔法使いどもが召喚に成功した！」

　おや。兵士さん達が歓喜に溢れ始めたね。歓迎されているのかな？兎も角、賢者は魔法使いに召喚されやって来るシステム、と記録。まぁこの認識が正解かはどうでもいい。どう行動すべきか悩んでいたら、ヒゲを生やした老人に誘導される。

『事情より先に名乗ってくれるね？』
「勿論ですとも！私は中央の国の魔法管理大臣、ドラモンドと申します。」
「えぇと…僕は中央の国の書記官、クックロビンです。」

　明らかに生真面目そうな後者の青年―――名をクックロビンと言ったか。どうやら彼、意思疎通が図れる相手の雰囲気がある。大臣のドラモンドやらと正反対だ。

「さぁ、賢者様！魔法使いどもが此処へ来る前に、中央の国にお連れしましょう！」
『魔法使いを待つ…の間違いでは？』
「何を仰います！我々は賢者様をお待ちしていたのです！賢者様には‹大いなる厄災›と戦い、世界を救って頂きます。」

　戦う。僕はこの単語に引っ掛かった。はて？それは魔法使いのお勤めな筈だが。僕個人の認識として…魔法使いは戦い、賢者は魔法使いが有利な戦況を作る支援職。間違いであっても所詮は偏見だ。腹立つ義理など皆無に等しい。ただ…。人間と魔法使いの不仲説は事実だと、確証を得た瞬間だった。