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第一部 ページ4

西の国・未開の天文台。其処に居候として身を置く、或る人物の髪が乱れる。

「満月…か。」

 憂いを紅い瞳に宿らせた金髪の男性。彼は書類を期限別に分ける為、身体を屈ませ書斎の床に散らばる幾多の紙を掻き集めていた。全ての紙には【研究結果/比較】と書かれている。
 男性はかつて、賢者の遣いとして異界人の傍に在った。それはつまり過去‹大いなる厄災›に挑んだことを指す。然し役目を終えたことで自身を縛る枷は外れた。依って、‹大いなる厄災›が及ぼした影響の調査を彼はしているのだ。それも石となった同胞を戻す為の。最近は親しい者へのみ知られる、多才な魔法使い、と云う肩書きを胸に日々過ごす。

「クソッ…失敗だ!」

 男性は悔し気に両手に所持した試験管を床へと投げた。

「うッ―――?!」

 不意に舌に受ける衝撃。何事か確かめてみる。すると消え掛けだった筈の、星の紋章が光りだした。まるで物語への始まりを告げるが如く。荒くなった呼吸を一頻り整えた後、男性は窓辺に腰掛ける。そして清く澄んだ蒼き月を眺め、呟いた。

「今回はどんな奴が招かれるかね。」


 南の国の魔法使い唯一の生き残り。それが彼、ジュビア・アンドロール

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作者名:暗明 x他1人 | 作成日時:2023年6月5日 13時

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