二章／賢者の書 ページ22
「近いな。」
そう言葉をポソリと零す金髪の男性。
「どうしました？」
それに反応を示した者は白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、如何に高潔感を匂わせる青年だった。
「なに…少々考え事を。」
「難しい問題ですか？」
男性は青年の問いを否定。本筋を逸らす為、論点をずらした。
「難しい問題、と謂えば。今年は敵わなかったと。」
「はい…。珍しい事も起きるのですね。」
彼らの話題は‹大いなる厄災›に変更となった。例年より強く、あのように苦戦していたのは初めてで。何故負けたかと問われれば、わからない、と口を開くだろう。中でも退治する魔法使いの半分が
南の国の魔法使いは全滅。東の国に西の国、中央の国は二人ずつ石へと化してしまった。
石になった。これが意味するのは、魔法使いの死。
因みに冒頭で男性が零した一言についてだ。実は石にこそ化していないが、命危うい者が約一名。今頃魔法舎と云う場所で処置を施されていることだろう。其の者が絶つ場合を想定したら東の国は三人だ。そうなるとキリ悪い数になってしまう。
男性は溜め息を零した。
「なぁ、王子。奴の居場所に目処は付いたか？」
「申し訳ありません。探してはいるのですが…。魔法の痕跡自体消されていまして…。」
「そうか…。だが王子、魔法と断定するには早い。」
「えっ？と云うことは…魔法使いではない可能性があると？」
「嗚呼。まぁその辺はどっちでもいい。彼奴、追跡に関しては徹底してるからな。捜す側からとっちゃぁ手間だろうが…引き続き捜索をお願いしたい。」
「お任せください。」
青年の応えに男性は微笑む。そして「失礼した」と言い残し、窓の外に待機させていた箒に跨ってその場を離れた。
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作者名：暗明 x他1人 | 作成日時：2023年6月5日 13時
