重なり想うイマージュ (ページ11)

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「ﾌｩ…俺だって、老人を脅したくはないさ。だが。俺達の賢者様に妙な真似をしたというのなら…話は別だ。」

　一頻り笑ったカインはそう言い、僕を大臣らから守る様に剣を構えた。まさか、れっきとしたこの老いぼれが不覚にもトキメく日が来ようとは…ね。しかも同性相手に。滝行でもし心身共に鍛え直そうかな。そんな事に頭を悩ませる最中。
　何気に顔を上げれば目に飛び込む、我武者羅に襲ってくる兵隊らの剣を軽々と躱しては余裕で叩き伏せる、カインの光景。無傷で仕留める事に手慣れている。ささやかな関心が湧いた途端、誰かの手が控え目に袖丈を引く。
　目線をそちらへと移動させていけば青ざめた顔色をした、もう一人の青年が。ふむ。袖丈を掴んだ者は彼か。そう謂えば…彼の名を伺っていないな。

「ぁ…。東の国の魔法使い、ヒースクリフです。ついて来て下さい。」

　そう促されたので頷いた。僕の反応を肯定と汲み取り、ヒースクリフと名乗った青年は薄暗い階段へと向かう。あの青年が気掛かりだけれど…。一先ず彼の後を追う。わざわざ乱闘になったあの場から遠ざかるのは、巻き込まれる可能性を少しでも避ける為だろう。
　それに先程、横目に彼の挙動を窺ってみた。もしかしたらヒースクリフはカインと異なり、他者との交流を嫌う魔法使いかも知れない。魔法使い全員が全員、好んで‹大いなる厄災›とやらに抗うワケではない。と、この時理解した。

〃→←二話･袖をひく者