【文豪ストレイドッグス】血の子午線 (ページ19)

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夜、いつものBarで中也と逢う

そこでも中也は可笑しかった

哀愁漂ふ雰囲気を纏い、憐れんだ様な目を私に向ける
そして儚く微笑う
其れは其れは救いようの無い堕落人のような
愛しい顔で

カウンターに乗り出し、何時もより度数が高い葡萄酒を頼む中也

「今日は、呑むぞ」

あゝ、自棄酒か

何か厭な事でもあったのか、単に気分が悪いのか
私を置いてペースを上げていく中也。

「中也、自分が酒に弱いって判ってる?」
「五月蝿え…」
「聞いてないね」

案の定直ぐに酒精が回りはじめ、既にほろ酔い状態になっていた。

呆れながら私もグラスに口を付ける

血の方が何倍も美味しいけれど、酒も呑めない訳じゃない。勿論水も。
流石に野菜汁酢(ジュース)は飲めなかったけれど
あの頃は端から端まで試されまくって、結構壮絶な事をされてきたんだなぁ、と他人事の様に思う。

そう昔の惨劇に思いを馳せている間に、隣の莫迦はできあがっていた。茹で蛸の様な顔でカウンターに突っ伏して、寝言のようなことを呟いている。
お酒弱いのは自覚しているでしょうに。

「ねぇ、中也…中也」

そっと呼び掛けると、少しだけ此方を向いて何だと言いたげな目を向ける。

「今日何かあったの?」

「…一寸疲れただけだ」

中也は僅かに目を見開いて、そしてまたあの哀しい顔をして云う。
それで寝入ってしまうのだからこの人は…

「莫迦中也(うそつき)」

そんな顔して誤魔化せる訳無いじゃない

私はぐっと残りの酒を飲み干した。