【文豪ストレイドッグス】血の子午線 (ページ2)

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もし私が日記を書くとしたら毎日「死にたい」と書くでしょう。こんなにも痩せて、最早命の限界。だのに何故。

「…私は未だ死ねないのでしょう」

ここ数週間何も口にした覚えがない。
手足は辛うじて使えるがこの死体置き場から脱せるほどではない。

この闇は何時になれば晴れるの?

数日程前、食料を求めて貧民街を歩き回っていた時に身体が持たず倒れてしまったのだ。更にその倒れた場所がかの有名な「ポートマフィア」の縄張りの中。貧民街を歩いていた筈だが、いつの間にかマフィアの領域まで来ていたのだ。ああ、拙い。確実に殺される。
マフィアの領域を犯した者には死あるのみ、だ。

案の定黒服の集団に見つかり担がれる。しかし死にはしなかった。異常な疲労と空腹で指一本動かせない私はなんと死体と間違えられ、死体置き場に放り込まれたのだ！

雑把が過ぎる。

普通に考えて脈拍、呼吸、瞳孔は確認すべきだろうに。冷酷無慈悲でとてつもなく恐ろしく狡猾だと耳にしていたから、期待を裏切られたような気分であった。

そして今に至る。

悍ましい死体、とは言い難い程ぐちゃぐちゃの無数の肉片と血に塗れて蕩けた様な骨。無残な屍が芥の様に散らばっているこの劣悪極まりない環境。貧民街でもここまで酷い光景は見たことは無い。

しかし住めば都というんだろうか、無数の死体の腐臭にも慣れ、否、寧ろ心地良い酩酊感のようなものさえ感じる様にもなった。慣れというのは恐ろしい。

時折新人(死体)が降ってくる以外は何の変哲もないまま、昼と夜の区別もつかず眠る生活が続いていた。

眠る前にいつも私はこの死体に埋もれて死んでいくんだ。と思う。だが目覚める時、私はいつも生きていて、死ねない。
飢餓状態が続いた所為なのか、もう空腹さえも感じなくなった。

環境が変わると人は変わるものだな、と呑気に考えていた。