デレて悪いか ページ8
きりやんは自室の前に着くと、ドアを開けAに中を示す。
「ほら、入って」
言われた通り大人しく部屋に入ったAを確認して、きりやんは廊下を見渡す。
よし、人影なし。
部屋に入って一応鍵を閉め、窓のカーテンも閉める。
万全を期した上で、所在無さげにしているAに向き直った。
「おいで〜。もっかいぎゅーしよ」
両腕を広げると、Aはおずおずと戸惑いながらも近付いてきた。
「お前ほんっっっとかわいいな〜」
Aの首元に抱きついて、頭をわしゃわしゃと撫でる。
Aはじゃれついたり甘えたりはしなかったが、しっぽが嬉しそうにぱたぱたと揺れている。
あんな環境で飼われてたわけだから、飼主に甘えるということを知らないのかもしれない。
「これからは思う存分甘やかすからな？仲良くしような〜？」
そう言ってAの両頬をむにむにといじっていると、閉めたはずのカーテンがはらりと風に揺れた。
「だらしね〜顔」
「うぉわぁ！！びっくりした！！シャークん！？何してんの！？そこで！！！」
突然声をかけられ飛び上がる程に驚く。
振り返った先では、シャークんが窓枠に腰掛けてニヤニヤとこちらを見ていた。
「お前、動物の前ではいつもそんなデレデレなの？」
「…………うるせぇ」
顔が熱い。
それを見られたくなかったから、わざわざドアに鍵までかけたのに。
「てかなんで窓から入ってきてんの！？」
「あ〜、ここ、すくそばに高い木があるから、入りやすいんだよな」
「そんな理由で不法侵入すんな！」
「あと、新入り見たかったしな。めっちゃデカいの連れてきたって聞いてさ」
そう言うと、シャークんはAに歩み寄る。
「へ〜。すげぇ強そう」
「………………………いや、どうかな」
自分もはじめはそう思ったが、今となってはなんとも言えない。
「え？なんで？体デカいし、爪も牙もすげーじゃん」
「いや〜、でも、めっちゃ臆病なんだよね。今も、窓から侵入してきた奴いるのに、全然吠えなかったし」
「たしかに」
すると、シャークんは何を思ったか、いきなりナイフを抜き、Aに向けて構えた。
「おら！かかってこい！」
しかし、Aは耳をぺったりと伏せて後ずさる。
「……ｸｩ〜ﾝ」
「ね゛ぇ〜〜〜、いじめないでよ。臆病だって言ってんじゃん」
Aに駆け寄り頭を撫でてやる。
「よしよし、怖かったな」
シャークんはナイフをしまって苦笑した。
「こりゃ番犬には向いてねぇな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 761人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すみれいん(プロフ) - 久しぶりにまた読んじゃいました。ハートがまた押せるようになったのでうふふですね…！！やっぱこのお話好きだし、いつ飼い主じゃなくなるのかなぁってむふむふしちゃいます (5月15日 11時) (
レス) @page46 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ガナッシュs2さん» 通知が来てちょうど読めるくらいの時間があったので一からまた読んじゃいました…！やっぱりたまにあるクスッとする所好きです笑 (2023年1月10日 2時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガナッシュs2(プロフ) - すみれいんさん» いつもハートありがとうございます！こちらもバタバタしていて更新できてなくてすみません！…こちらの続きもそのうち……！ｗ 必ず………！！ｗ (2023年1月9日 21時) (レス) @page46 id: 1465e56711 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ガナッシュs2さん» バタバタしておりお返事滞ってしまいました◯¬ 寝れそうになく読みたいと思い再び読みに来ました！しかもハート押せます。キタコレ！！となっております (2022年10月10日 23時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガナッシュs2(プロフ) - トキさん» 番外編も気に入っていただけてよかったです！！！せっかくの異形夢主が人間に戻っちゃったので、番外編で獣ver再登場してもらいましたｗ (2022年9月25日 0時) (レス) id: 1465e56711 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ガナッシュs2 | 作成日時：2022年8月3日 17時
