おい!なに勝手なことしてんだよ! ページ17
麗らかな陽気の午後。
スマイルは、裏庭に向かっていた。
今、きりやんは動物達を順番にシャンプーしている最中のはずだ。
ということは、彼女はきっとこの辺にいるはず。
「お、いたいた」
スマイルは日当たりのいい場所に悠々と寝転ぶAを見付け、歩み寄った。
案の定、近くにきりやんの姿は無い。
いつも真っ先にシャンプーの終わるAは、ここでひなたぼっこして毛皮を乾かしている。
スマイルに気が付くと、体を起こして尻尾を降った。
「よしよし、シャンプー終わったのか?」
Aを撫でると、いつも以上にふわふわさらさらだったが、
鬣の中だけがほんのりと湿っていた。
「こんなにもふもふじゃ、なかなか乾かないだろ」
スマイルが風魔法を応用して鬣の中に風を送り込むと、ふわりとせっけんの香りがした。
「この鬣いいけどさぁ、やっぱお前、狼ではないよな」
Broooockに、スマイルなら絶対に気に入ると言われてからちょくちょく会いに来ているが、
この生き物は決して狼ではない。
「俺は狼が好きなんだよ、お前はちょっとデカすぎるしさぁ」
すっかり乾いた鬣をもふもふといじりながら、スマイルは不満を口にしたがAは大人しくされるがままになっている。
スマイルは厨房からくすねてきた果物をAに差し出す。
Aはスマイルの手に牙が当たらないように、上手にそれを食べた。
Aが何を好むかは、きりやんの『Aの好きな物リスト』を盗み見たのでちゃんと解っている。
「うまいか?もっとあるからな」
Aは狼ではない。
しかし、狼の次くらいには格好いいし可愛かった。
次の果物を差し出そうとした時、Aは視線を上げて耳をピンと立てた。
「おい、何してんだ」
背後から恐ろしく低いきりやんの声がし、スマイルは驚いて振り返った。
「げ、きりやん。……くそ、バレたか」
「バレたかじゃねーよ!!!何してんの!?」
きりやんはスマイルの手にある果物に目を止めて、さらに眉尻を釣り上げた。
「おい、なに勝手におやつあげてんだよ!どうりでいつもシャンプーの日だけ食欲無いわけだ」
「別にいいだろうがよ。お前だってもっと太らせたいって言ってたじゃん」
「言ったけどさぁ!俺はちゃんと栄養バランスとか考えてご飯あげてるわけ!勝手なことすんな!」
こうなってはもう誤魔化すことはできなさそうだ。
スマイルは諦めて引くことにして、最後にAの頭を撫でる。
「じゃ、また来るからな」
「おい!」
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すみれいん(プロフ) - 久しぶりにまた読んじゃいました。ハートがまた押せるようになったのでうふふですね…!!やっぱこのお話好きだし、いつ飼い主じゃなくなるのかなぁってむふむふしちゃいます (5月15日 11時) (レス) @page46 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ガナッシュs2さん» 通知が来てちょうど読めるくらいの時間があったので一からまた読んじゃいました…!やっぱりたまにあるクスッとする所好きです笑 (2023年1月10日 2時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガナッシュs2(プロフ) - すみれいんさん» いつもハートありがとうございます!こちらもバタバタしていて更新できてなくてすみません!…こちらの続きもそのうち……!w 必ず………!!w (2023年1月9日 21時) (レス) @page46 id: 1465e56711 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ガナッシュs2さん» バタバタしておりお返事滞ってしまいました◯¬ 寝れそうになく読みたいと思い再び読みに来ました!しかもハート押せます。キタコレ!!となっております (2022年10月10日 23時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガナッシュs2(プロフ) - トキさん» 番外編も気に入っていただけてよかったです!!!せっかくの異形夢主が人間に戻っちゃったので、番外編で獣ver再登場してもらいましたw (2022年9月25日 0時) (レス) id: 1465e56711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ガナッシュs2 | 作成日時:2022年8月3日 17時