まぁ、許さないけどね? ページ28
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裏庭の一角。
Aの首輪が落ちていた辺りに腰を下ろし、きりやんは途方に暮れていた。
あれから丸一日が経過してしまったが、まだAの行方も子ウサギの行方も解っていない。
城の中はもちろん、周辺の森の中までくまなく探したし、
匂いでの探索が得意な犬科の動物達を総動員させたが、成果はなかった。
Aは飛ぶことができるから、捜索範囲をもっと広げなければいけないかもしれない。
そんなことを考えていると、さくさくと草を踏む足音が近付いて来た。
「きりやん」
「ん?あぁ、きんとき」
振り返ると、何か紙らしき物を持ったきんときだった。
「A見つか………ってなさそうだね、その顔は」
苦笑すると、きんときはきりやんの隣に腰を下ろした。
「手がかりゼロ。………なんでいなくなっちゃったんだろうな〜」
たった一日。
たった一日あの毛並みを撫でないだけで、
ご飯を食べる姿を見てないだけで、
喪失感が酷かった。
「そのことなんだけどね、ちょっと聞いてほしい話があってさ」
妙に改まった口調に振り返ると、きんときは困ったような笑みを浮かべていた。
「Nakamuなんだって。……Aを逃したの」
「………………………え?」
突然のことに、きりやんの頭は一瞬何を言われたのか理解が追い付かなかった。
「昨日さ、AがNakamuの部屋に勝手に入ってたらしいんだよ。で、部屋の中ぐっちゃぐちゃに荒らしてたって」
「はぁ!?そんなわけないだろ!!
Aは今まで一度もそんなイタズラしたことないじゃん!!」
きりやんは思わず声を荒らげていた。
Aは絶対にそんなことはしないと言い切れる。
怒っていても、せいぜいベッドの下に顔を突っ込んでいじける程度なのだから。
「そうかもしれないけど、部屋が荒らされてたのは本当みたいだし。
……あと、なんかちっこいのも一緒だったとかって」
「…………あ。…………あ〜〜〜」
「あ、心当たりある?」
「……ああ、……うん、………あるわ」
Aと一緒に姿を消した子ウサギは、かなり活発だった。
怪我の治療をしている時も、結構暴れていたし。
可愛そうだなどと思わず、外出する時はカゴか何かに入れておくべきだった。
後悔がどっと押し寄せる。
「それは確かにも俺も悪いわ。………でもさ、だからって」
きりやんは頭を抱える。
「だからって、逃がすのはいくらなんでもやりすぎだろ!」
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すみれいん(プロフ) - 久しぶりにまた読んじゃいました。ハートがまた押せるようになったのでうふふですね…!!やっぱこのお話好きだし、いつ飼い主じゃなくなるのかなぁってむふむふしちゃいます (5月15日 11時) (レス) @page46 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ガナッシュs2さん» 通知が来てちょうど読めるくらいの時間があったので一からまた読んじゃいました…!やっぱりたまにあるクスッとする所好きです笑 (2023年1月10日 2時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガナッシュs2(プロフ) - すみれいんさん» いつもハートありがとうございます!こちらもバタバタしていて更新できてなくてすみません!…こちらの続きもそのうち……!w 必ず………!!w (2023年1月9日 21時) (レス) @page46 id: 1465e56711 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ガナッシュs2さん» バタバタしておりお返事滞ってしまいました◯¬ 寝れそうになく読みたいと思い再び読みに来ました!しかもハート押せます。キタコレ!!となっております (2022年10月10日 23時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガナッシュs2(プロフ) - トキさん» 番外編も気に入っていただけてよかったです!!!せっかくの異形夢主が人間に戻っちゃったので、番外編で獣ver再登場してもらいましたw (2022年9月25日 0時) (レス) id: 1465e56711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ガナッシュs2 | 作成日時:2022年8月3日 17時