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璃音くんと話していたら凄い音がした。急いで駆けつけた先には倒れている初等部の男の子と女の子。
何事だろうと思って輪の中に入ったのが間違いだった。そう、間違いだった。
輪の中心にいたのは蜜柑と棗くんだった。棗くんに覆いかぶさるように倒れている蜜柑。
「お前、ヘタクソなのはダンスだけじゃなくて、キスもかよ…」
棗くんが口を抑えながら蜜柑に言った言葉が、頭の中でグルグル回った。
抑えきれないほどのどす黒い感情が、どうしようもない気持ちが溢れ出てきた。
どうして、蜜柑なの。どうして、どうして、どうして。
「…どいつもこいつもキスの１つや２つで、うるせー」
どうして、だなんて、そんなの決まってる。
「…棗くんと、蜜柑が、キス…っ、」
“キスの１つや２つ”……
「…なあ、やっぱ…
キスとかしたことあんのかな、今まで。あの余裕…」
「絶対してるよー、棗さんだもん！
やりまくりだ！さすがだ！」
棗くんにとって、あたしとのキスは、“ただのキス”。
「すげーよなー。棗さん、大人だー」
蜜柑とのキスは、“愛する人とのキス”。
「…蜜柑っ、」
気づいたら名前を呼んでいた。何か言いたかった訳じゃない。
「ちゃうねん！A、コレには色々あって…」
「…っ、いろいろ…？」
蜜柑の声なんか聞きたくない。あたしは、汚い。
なんでこんなに胸が締め付けられるの。
どうして、蜜柑の事がこんなに恨めしく思っちゃうの。
「…あんな、アイツが嘘言ってん！ウチが当たったんは歯で、口やなくて…」
───これは“嫉妬”。
あたしは棗くんが、“好き”。
けど棗くんは、“蜜柑”の事が好き。
あたしの棗くんへの想いは、“迷惑”。
だったらあたしは、“邪魔者”。
「…良いと思うっ、」
心と言葉は裏腹で、自分の言いたい事とは違う言葉が、勝手に声に出てた。
「…お似合いだよっ、棗くんと蜜柑っ、」
そんな事を全然思ってないのに、あたしは笑った。
確かに笑っていたはずなのに、どうして、こんなに心が痛いんだろう。
知らない間に流れていた涙を拭って、もう１度笑った。
「…応援するねっ！」
蜜柑が何か叫んでたけど気にせずに走った。今は誰とも一緒にいたくなかった。
前を見ずに走っていたら誰かとぶつかった。
相手の顔も見ずに謝って、再び走り出そうとしたら手を掴まれた。
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作者名：未来 | 作成日時：2022年11月24日 13時
