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クッキーを咥えながら、離れたところで荷物を運んでいた翼がケーキ作りをしているA達を見つけた。
クリームまみれになりながらも、楽しそうに作業をしているAと蜜柑。その様子に小さく微笑む翼。
「……」
しかし、次に彼の視線は蜜柑とAの隣にいる人物の方へと向けると暫く固まった。
「私、お水汲んでくるね」
「うんっ、行ってらっしゃい！」
Aちゃんの他にも一緒に生クリームを塗ったり、デコレーションをしたり、大きなケーキを作るのを手伝ったお友達、蜜柑ちゃんと蛍ちゃん。
楽しかった…
こんなに楽しかったのは初めて…
思い切って抜け出してきて良かった…っ
楽しさと嬉しさに胸を膨らませて歩いていたのばらは、思わず前にいた人とぶつかる。
「あ…すみませ…」
自分とぶつかった人物を見上げた瞬間に、のばらの表情から笑顔が消えた。
「A、」
「あっ！翼くん！」
「翼先ぱーい！」
ケーキを作っていたA達の所へ翼がやって来た。Aと同じくらいクリームまみれになった蜜柑もやって来た彼を見上げた。
「汚れてんなーお前ら…」
翼は微笑んで、Aの顔に付いていたクリームを取ってやった。そして、指に付いた白いクリームを舐めながら目線をAに合わせた。
「ねえ、聞いて翼くんっ！
あたしね、新しいお友達が出来たのっ、」
「今お前らと一緒にいた…」
「うんっ！そうだよっ！あっ、名前はね、」
「"茨城のばら"…」
「…えっ、何で知ってるの？
知り合い？あっ、同じクラスの子？」
「知ってるもなにもA、あいつは有名人だよ。
棗や璃音と同じくらい」
「…棗くんと璃音くん？」
「あれは危険能力系のおひめさま、通称"雪女"」
──その理由がはっきり分かれば、
「のばら、」
「……」
棗が厳しい視線を送る先には、のばらがペルソナの手に自身の手を重ねているところだった。
「はい、ペルソナ…」
私にも、出口のみえないトンネルの先に
光が見い出せるかもしれないって……
「先輩が言ってくれたし、俺達が首突っ込む必要はなさそーだね」
「…あいつの瞳、見てみろ」
「あ…はは、雪女って知ったのに知る前と変わってねえじゃん」
「あいつはそーいう女だ」
誰に対しても全力でぶつかる。
危なかっしくて直ぐ壊れるくせに芯は強い。
そういう所に俺は惹かれたんだ。
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作者名：未来 | 作成日時：2022年11月24日 13時
