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「飛田く──ん、いたいた──！
ツリーの方なんだけど、高い所が怖くて足がすくむ子が結構いて困ってるのー。おねがい！幻覚で何とかしてあげて──」
「えっ、」
「気にしないで行って…
委員長…あたしのことは忘れて行って…」
「Aちゃんー…ごめんねー」
別の方から委員長を呼ぶ声がして、まさかの委員長までもが手伝いに駆り出されて、早々と連れて行かれた。
「…ゔーっ、棗くんっ、」
一人で残されて、涙目になってきた。確かに音のアリスなんて此処の作業では使えないよ、使えないけどさ…
文化祭の時みたいに上手くいかないけど、今頼れるのは棗くんしかいないの。
「…あた、あたしだけ、やることないっ、」
自分で探せって話なんだけど、でも今、棗くんと一緒にいたい。そうしないと一人ぼっちなんて耐えられそうにない。
「…なづめぐーんっ…」
鼻水垂らしてないし涙も流してないけど、けど、あたしの必死さが伝わったのかな。
棗くんは嫌な顔はしてたけど、抱きついた事に対しては何も言わなかった。
「あ、棗く──ん！」
そりゃあ、棗くんだもん。クラスの皆から慕われてて、幹部生にまでなった棗くんだもん。
あたしとは違って、仕事は山ほどあるって思ってたよ。
思ってたけどそれが現実になるなんて。せめてあたしの仕事が見つかってからにして欲しかった。
「ケーキ班に来てくれたのねー♡良かったー♡初等部の子達に手まわしたかいあったー！」
甲高い声が聞こえたと思ったら、あたしはケーキの準備をしてる先輩に睨まれた。怖くて棗くんから離れたら、先輩は棗くんの腕を握った。
「ねえ、こっちきて！
オーブンの調子がよくないの──っ！
棗君のアリスで何とかしてー」
そして棗くんの話を聞く事なく、棗くんは先輩に連れて行かれてしまった。
少しだけ救われたことは、連れて行かれる前に棗くんがこっちをチラリと見てくれた事。
勘違いだと思うけど、心配してくれたのかな。
「…やる事がないっ、」
蜜柑みたいに自分のアリスを誰かに言って、自分に合う仕事を見つければ良いんだけど、そんな勇気はなくて。
友達と話すだけでも噛んじゃうのに、先輩ましてや他の能力別クラスの先輩なんて到底無理だ。
「…はあーっ、いいなあ、みんな…
みんなの力になれて…っ」
やっぱり、あたしは役立たずだなあ。
皆が一生懸命やってるのに、あたしは何も出来なくて。
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作者名：未来 | 作成日時：2022年11月24日 13時
