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確かにあの時の、あたしのアリスは役に立たなくてつまらなかったかも。
「…はあーッ」
「材料きたぞ〜」
今年も役立たずかあ、なんて思って溜息を吐いた時に、ケーキの材料であるビックフルーツを運んで来た岬先生が見えた。
「玉子きたぞ〜…」
「はっ、ピヨ？！」
そして岬先生の後ろから恐ろしいくらい大きなヒヨコが大きな玉子を運ぶ姿が視界に入った。
「ピヨ…？」
「……！？」
誰よりもいち早く反応したのは流架で、ヒヨコも流架の存在に気付く。もしかして流架のお友達？
「(こ…っ、ことりちゃん………っっ、何でここに…)」
「ピ…ピヨ…ッ」(訳不可能)
「(い…いけない…っっ
人前でメロメロになるわけには…っ)」
「｢｢…………………………｣｣」
「流架どうしちゃったんだろう」
どうやら運命のいたずらの再会らしい。ヒヨコが玉子を落としちゃった。
駆け寄りたい衝動に駆られる流架は周りに人がいる中で
メロメロな表情をする訳にはいかず、必死に我慢してるんだって。
「ご…ごめん…、オレッ」
「｢あ───、いいからいいから｣」
あ、そっか。
流架のアリスは動物フェロモンだから、ヒヨコちゃんの
誘惑には勝てなかったんだ。
飾り班へと変更になった流架に手を振る。自分のアリスを生かして人のために働いてる流架。
「…やっぱり、流架は格好良いな」
あたしのその言葉を聞いた棗くんがチッと舌打ちをした事とか翼くんがニヤニヤ顔をしてた事なんて、あたしは知らなかった。
「でも…何で、流架は飾り班に行かなかったんだろう…初めから“飾り班”に行ってた方がよかったよね」
「A、そういうこと言っちゃダメ…」
あたしの言葉にそう返した翼くんを見たら、ほんわかとした顔の翼くんと美咲ちゃんと目が合って何故か棗くんにはジト目で見られた。
皆の視線を気にしつつも流架の抜けた残りのメンバーでケーキを作る事は決定事項だから、早速準備に取り掛かる事にした。
何か出来る事がないか探していたから、あたし達の後ろで柱に張り付いていた子がいたなんて気づかなかった。
「…き、来ちゃった、」
こうやって人が集まる場所に自ら、それも彼に無断で赴いたのは初めての事。
「すごい…っ」
バレたらどうしようとか、色々と不安があった。けれどそれ以上に、この場所の賑やかで楽しそうな雰囲気に、もしかしたらという期待が膨らむ。
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作者名：未来 | 作成日時：2022年11月24日 13時
