343・Ｚ編 メデューサ ページ47
大広間にまんまと追いやられた璃音達はこのアジトを統括している幹部や部下と対峙していた。
「直に会ってみると、まぁ…
こんな子供があの“銀狼”と“黒猫”ですか…」
目の前にいる男が小馬鹿にしたような声でそう言った。顔は知らないがその風格で何となくわかった。
この男が“メドゥーサ”なのだろう。璃音は確信を持ってそう思った。自分達を舐め腐っている目を向けられて、虫酸が走るのを感じた。
璃音は苛立ちに呑まれぬように、至極冷静に戦闘態勢をとる。相手は大人で此方よりも戦闘知識も豊富だろう。呑まれては負ける。
「A達はどこ」
「何のためにここまで、
奴らを追って来たかは知りませんが。
降ってわいた幸運といったとこなんでしょうかねえ…」
「……あいつらをどこにやった」
怒気を孕ませながら言うものの、この男に効果はない。それどころか楽しげに璃音達を見て、こう言うのだ。
「志貴くん。
どの程度の力か、まずは小手調べといきましょうか」
志貴と呼ばれた男が、一歩一歩ゆらりゆらりと近づいてくる。きっと彼のアリスは強力だろう。
加えて情報では、彼のアリスのレパートリーも豊富だと聞いた。油断などしてたら、こちらがやられてしまう。気は抜けない。
「…翼先輩、周りの雑魚の足止めを頼む。
俺と棗は……こいつの相手するよ」
先に動いたのは棗だった。すぐさま流架を後ろに庇って左手を志貴に向けた。
「流架、目閉じてっ」
志貴は棗が炎を出すより早く身を守る結界を形成した。しかし、炎は彼の周りに現れなかった。
「｢｢ぐぁあぁああーっ！！！｣｣」
「！」
代わりに後ろにいた男達の断末魔が聞こえ振り返れば、全身を電流に包まれ、もがき苦しむ仲間の姿があった。
「まずは３人…か」
彼らは逃れられない雷に閉じ込められて、やがて為す術なく砂となり、塵と化した。
「…んなもん見せんてんじゃねえっての、影踏み！」
いきなり仲間が散っていった事に恐れ慄く残りの敵を、今度は翼が影で動きを封じた。彼らははまんまと捕らえられ、指一本動かせない状態だ。
「流架、目開けていいよ」
「後ろに下がってろ」
「…わかった、」
流架が目を開ければ、大勢いた敵が３人となり、志貴と呼ばれた青年がいること。
そして、部下がいなくなってしまったのにも関わらず、楽しそうに高みの見物をしている眼鏡の男だけだった。
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作者名：未来 | 作成日時：2022年6月27日 14時
