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先生、先生。あの日から随分遠く…
「せんぱーい」
「げっ、杏樹じゃん…」
「茜せんぱーい、柚香せんぱーい。先輩らてば──」
「何よ…」
「ついてくんな、歩く十八禁男！」
「…ふっ、それ、流石にひどいよ柚香。あははっ」
先生と茜と仲間が、
信じてくれる人達がいれば、へっちゃらだった。
鳴海や志貴にも、何度も何度も助けられて救われた。
「…盗むアリスが悪いんじゃない」
あの雨の日も、先生の言葉にどれだけ救われただろう。
「それに怯えて疎むなんて、そんなの視野が狭い考えの証拠さ」
蔑まれるのに耐え兼ねて茜と身を寄せ合って泣いた日。
「どんなアリスだってその持ち主の使い方次第で毒にも薬にもなる」
誰にも見つからないような場所で泣いていた彼女達を、彼はいとも簡単に見つけ出してくれた。
「大事なのは、自分の
お前が、このアリスを持って生まれたことは、きっと…ちゃんと意味のある事なんだよ」
「先生…」
その言葉に、何度も何度も励まされた。
先生の言葉があったから、
このアリスを拒まずに生きてこれた。
先生の言葉があったから、
茜のように自分のアリスを愛する事ができた。
何度も折れそうになった心を、
彼の存在がいたから折れずにいられた。
「…先生。でも、やっぱさ！
あたしに子供ができたらアリスじゃない子がいいな」
「へー、珍しく意見が分かれたわね。私は自分の子供がアリスだったらいいなーて思うわよ。どんなアリスでも生まれ持った力は自分の一部だし」
「何で？」
「アリスなんて苦労するだけだし、親にも会えないし。もしも、どーしてもアリス持っちゃうんだったらあたしより断然、先生のアリスがいい！」
「ハイハイ」
ずっと…ずっと一緒にいたかった……
「先生！」
「泉水兄っ！」
「先生が死んだなんて嘘でしょ！？」
「泉水兄が死ぬはずない！柚香を置いて自決したなんて嘘よ！」
「これで事故だなんて…そんなの、ありえない！先生は殺されたんだ！！」
何で…
「この子だけは…この子だけはアリスと関係なく生きてほしい。この子だけは─……」
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
“みかん”
「先生とあたしの、大切なこの子だけは………」
“みかん、ごめんね…”
どう歯車が噛み違えて、こんな……こんな………
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作者名：未来 | 作成日時：2022年6月27日 14時
