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あたしや翼くん、璃音くんの数歩後ろを歩いている棗くん。いつもの澄まし顔と違って、汗をかいていて苦しそう。
「……」
"あいつらに言うな"
「…え！？」
その時、翼くんが動いた。棗くんをグイッと持ち上げてガシッと掴んでそのまま、よいしょっと担ぎ上げた。
「！」
「何す……」
「あ────もうっ、みてられっかよ！」
「てめ、」
「うっせ──！振り落とされたくなかったら黙って抱えられてろ！」
「な…何事…」
棗くん自身、予想外だったらしくてジタバタし始めた。驚いているあたし、開いた口が塞がらない蜜柑と流架。
翼くんと棗くんの間に何があったんだろう。棗くんは翼くんの体に強烈な蹴りを入れた。
「いてっ！いててて！蹴んなっ！お前な──俺だって、おめーみたいなガキ、誰が好きこのんでこんなこと…」
大丈夫かな、あわわわっ。
棗くんが翼くんに火を付け出したよ。
「げっ、火つけんなよっっ！つけたらあの事全部バラすかんなっ！しょーもねー事でアリス使うんじゃねーよ」
ジタバタと暴れる棗くんに、翼くんは焦ってる。状況が掴めてないけど、目の前の言い合いは続いてる。何げに一人、璃音くんだけは平然と争いを見つめてた。
「…たくっ、んっとにかわいくね──。少しはこっちのゆーこと聞けっつーの。黙ってやってんだからよー」
「……」
ぽんっと軽くお尻を叩いた。えっ、凄いっ。翼くんてば棗くんのお尻叩いた。そしたら棗くんは固まった。
「わっ！？いででで！何、噛んでのお前！？
引っ掻くなって、ネコかお前はっ！蹴んな！くそっ！
このっ、投げんぞおら──っ！」
あっ、やっぱり黙ってるわけないよね。プライドが高いあの棗くんだもん。だけど、噛み付くのは可哀想だよ。
本当に昨日の間に何があったんだろう。
最後まで意味が分からず、取り残されたあたしと蜜柑、そして流架は不思議そうに顔を見合わせた。
「…なんか、仲が良いんだね、棗くんと翼くんて…」
「あれ見て仲良いって思うの、Aくらいだろー」
ハハハッと笑った璃音くんが余りにもいつも通りだったから気付けなかった。璃音くんがこの時に、何を考えていたのかも。
「…ほら、行こう？A」
「むっ…手は繋がないもん、」
「えー残念」
あたしの言葉でどれだけ傷ついていたのかも、璃音くんの覚悟も、あたしは何も知らなかった。
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作者名：未来 | 作成日時：2022年6月27日 14時
