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「…俺、棗にもこの景色おしえてくる！待ってて！」
───やっぱり楽しい事は棗と一緒に味わいたいから。
「…うんっ、待ってるねっ！」
やっぱり凄いな、棗くんと流架の絆は。流架って本当に棗くんが大好きで、棗くんも流架が大好きなんだなあ。
なんか良いな、そういうの。憧れちゃうなあ。
あれ、璃音くんと翼くんはいいのかなあ、とか。
色々思うところはあったけど。
待っててと言われたから、ぼーと水面を見つめていれば近くで水音がした。
覗いたら蜜柑と棗くんが並んでいるのが見えて、反射的に近くの茂みに隠れちゃった。
あれ……、何であたし今、隠れたんだろう…？
え…声かける事だって、できた…よね？
「こんな所で何してんの、棗。あ、さっきルカぴょんがあんた呼びに、そこですれ違ったで……｣
蜜柑が話している間も、棗くんは湖に手を入れて掬って飲み始めた。水を飲みに来たらしい。
「…どうしよう…、」
あたしって、もしかして凄く悪趣味な女の子なのかな。あっ、でも違うよね、毎回毎回わざとじゃなくて。たまたまなの、偶然近くに居合わせちゃうだけなの。
本当、こんな所にいてごめんなさい。真横の茂みで息を潜めながら、心の中で謝罪した。
……あたしの眺める先には、蜜柑と棗くんがいる。
後夜祭の時もだけど、この２人って凄く仲が良いんだなって思い知らされた。
２人は、まさかこんな場所にあたしがいるとは思わないから、会話を続けている。
「…それにしても。
ルカぴょんて、ホンマにあんたの事好きなんやなあ」
「は？」
「あんたにこの景色見せたい、璃音にも教えたいゆうて走っていってさー。でも確かに、こんなキレーな景色やし、大好きな人と一緒に見たくなるのも分かるわー。
ウチも、蛍とAと一緒に見たかったなー。
くす…前もルカぴょんと話してたんやけど。
ウチらとあんたらの関係て、何か似てるよなーって」
「…似てるかよ、キモチワリ。お前らと一緒にすんな」
「………」
ばっさり切り捨てる棗くんに蜜柑は黙ったけど、怒りを露にしないように話題を変えた。
「あっ、あんな！Aが殿先輩から貰った
前に棗くんは蜜柑の事、名前で呼んでたし。
あたしなんて名前で呼ばれた事…
あっ、名字で呼ばれた事すらないなあ…。
んーもしかしたら、覚えてないかもしれないだけかな。
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作者名：未来 | 作成日時：2022年6月27日 14時
