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「おい。こいつまだ連れてく気か。明日も」



「また、そーゆーことゆう──」





それまで黙って見ていた蜜柑。
我慢出来ずに苦言を呈しても、棗の視線は変わらない。


流架の背中に隠れるペンギーを棗は睨んだ。蜜柑と棗の言い合いを見て、Aは眉を下げた。





「まぁまぁ、2人共…」





ペンギーは棗の表情を見て、怖気づいてしまっている。璃音はその空気を見て、蜜柑に声をかけた。





「……蜜柑、やっぱ適当に水汲んできてよ。
ペンギーと一緒に」



「う、うんっ!行こ、ペンギー!」





蜜柑はペンギーを引っ張るようにして、湖の方へ連れて
行った。汲むものは適当に見つけてきてもらおう。


ひとまず、今は棗である。





「棗、あんなに嫌な目でペンギーを見るなよ」



「………」



「あれで一生懸命なんだ。あいつは俺達と違う、不器用なタイプなんだと思う」



「璃音くん…」





棗の怒る気持ちは勿論、理解できるから。
これは遊びではなく、下手をすれば生死にだって関わるかもしれないのだ。


それ故に足手纏いは必要ない、という気持ちが起きるのは至極当然だった。





「…………」





棗は終始黙っていたが、言い返して来ないということはきちんとその辺りの事も分かってているのだろう。


押し黙る棗を見て、璃音は軽く微笑んだ。





「あたしも、水飲みに行って来るね、」





それから数分後。水汲みへ行かせてからちっとも帰ってこない蜜柑とペンギーを心配したAは後を追った。


それからまた数分が経ち、A達が遅いからと湖の方へ向かった流架を見送り、残るは棗と翼、璃音の3人。


あからさまに嫌そうな顔と雰囲気を醸し出し始める棗。璃音は苦笑いを通り越して、思わず吹き出した。





「…おい」



「めっちゃ嫌がってる…っ」





喉の奥で笑いながら肩を震わせる彼を絶対零度の視線で睨みつけて、不機嫌さを隠さずに発せられた短い一言は相当に低かった。


呆れた眼差しを向けてくる翼を意に介さず、ひとしきり笑った璃音は大きく深呼吸した。


舌打ちをしてそっぽを向いてしまった棗を、昼寝を邪魔
された猫の姿に重ねた、猫の方が可愛げはあるが。
宥めるも、効果はいまひとつのようだ。


この面子に耐えかねた上、流架まで帰ってこないという事態に痺れを切らせた棗は立ち上がって、湖へ向かって行った。


その姿を見送って焚き火へ向き直った。炎を絶やさないように枝を追加して、ぼーっと火を見つめた。

308→←306・Z編 湖



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作者名:未来 | 作成日時:2022年6月27日 14時

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