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蜜柑でさえ、久しぶりに見みれる珍しく蛍らしい微笑みであった。その微笑みを目の当たりにして、蜜柑は透かさず赤面した。
女の子に対して顔の火照りを感じるのは生まれて初めてであったA。その上に、あの蛍が胸の内を話したので動揺してしまった。
蛍にとっても今までこんな風に自身の事を蜜柑に話したのは初めてであり、後に転校してきて仲良くなったAにも同様である。
以前の兄・昴については蜜柑が根掘り葉掘り聞いたから答えてくれただけであって、蛍が自分から話してくれた訳ではない。
嬉しい。ただただ素直に嬉しかった。また一歩更に蛍へ近付けたような気がした。
「……あたしも、委員長大好き…っ!」
「委員長のアリス絶対取り戻そな…!一緒に!」
嬉しくて嬉しくて、こんな状況だがAと蜜柑は自然と頬が緩んだ。そんな彼女達を見て蛍もふっと微笑んだ。
ドゴ…ン…!!
そんな穏やかな空気を切り裂くように突然轟く爆発音。驚いた3人は音のした方へ振り返って見えた風景に唖然とした。
「な…何!?護送車?!」
「爆破…っ!?」
見えたものは炎上する護送車やそれを囲む黒い車数台、微かに叫び声が聞こえた。
────時を少し遡る。
A達の件で教員部屋へ慌ただしく入った副担は事情を説明し、瀬里奈に千里眼で3人を捜して貰っていた。
「あっ、鳴海先生っ!見つかりました──っっ!!」
「まじっ?!あんの3人は〜…」
背後に姿勢良く立つ神野は、手に持つ杖から雷を放つ。流石の鳴海も顔を青ざめており、ガタリと席を立っては暴言を吐きそうになった。
「し…しかも場所が…っ!本部…護送車事故付近………」
しかし、居場所を聞いた瞬間。その場に居た教員全員が漠然とした。場所が場所なのだ当然であった。
場所は戻り、会話の盗聴を続けていた蛍の顔に険しさが浮かぶ。彼女の動きが止まっていた。
《…アリス紛失事件容疑者を本部に護送中、門前で爆破事故発生。騒ぎに乗じて2名の侵入者乱入で容疑者脱走
爆破の原因は侵入者のうちの一人の
容疑者は侵入者とともに本部付近を逃走中。爆破・追跡の際、職員3名負傷》
「ほ…蛍、」
「ねぇ…ここに居ちゃ、まずいんじゃ…」
青くなる蛍の顔に、徒ならぬものを感じたAと蜜柑が心配して覗き込んだ。これから耳に入ってくる情報に、蛍は愕然した。
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未来(プロフ) - 七瀬あおいさん» コメントありがとうございます!お気遣いまでしていただいて有り難いかぎりです。引き続きよろしく読んでいただけると嬉しいです。更新頑張って参ります! (2021年7月29日 15時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬あおい(プロフ) - このシリーズとても大好きなので更新めちゃくちゃ嬉しいです。これからも未来さんのペースで構わないので頑張ってください。 (2021年7月24日 22時) (レス) id: 56c81eaebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2021年5月20日 0時