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「蛍ちゃん頭いいから、周りをよく見て冷静に考えて行動するでしょう?だからすごく頼りになる」
「だからこの間、蛍が誰よりも委員長の気持ち考えてんのみて、すごいうれしかった」
「きっと、さびしがっているわ」
2人は微笑んで包み隠さず自分の胸の内を伝えた。
ピタリとくっ付く蜜柑を引き剥がして蛍は口を開いた。
「……あの子は、委員長はあのクラスのオアシスだから
……この学園で曲がって生きていかないですむ。
委員長は私にとって一つの座標だから、
早く、もとに戻って元気になってほしいだけよ。
この学園に来た当初、荒れきったクラスの副委員長なんか任されて、周りの大人も誰も信用できなくて」
面倒ごとが嫌いな彼女にやる気が起こるなど当然なくていろんな事にウンザリきていた。
その前から委員長を任されていた彼が毎日飽きずに一生懸命まとめては蹴散らされて、まとめては蹴散らされているのを横目で見ていた。
そんな彼への認識は、ばかみたい……の一言に尽きた。
けどある日、本当に気まぐれに「いつもごくろーさん」と心の篭ってない労いを言ってみた。
無駄なのによーやる、と思っていたから。それなのに、彼は。
『僕らはここで親兄弟も…頼れる人もあまりいなくて…
でも僕らの世界はここだけだから………
ここの状況が不満で荒れる人もいるけど、不安で寂しい子だっていて』
ふと窓の外を眺めながら静かに自身の気持ちを語る彼をただじっと見ていた。
『そしてみんなが一つの同じ事で笑えるような…そんな日が来たらなって。
同じ境遇同士が肩寄せあって助けあっていけたら、
きっとなにより心強くて…寂しい気持ちも遠くなって…
今はまだ理想だけど、いつか、本当にそんな日がきたらいいなって…思ったんだ』
そんな甘いもんじゃないと思うけど「がんばってね」と、とりあえず励ました。
「その時は、一人でそんなの頑張ったってどうすんのって思ったけど。でも…委員長の笑顔がなかったら今の
委員長の頑張る姿、久しぶりに再会した蜜柑。
興味本位で仲良くなった真っ直ぐなA。
3人が楽しくしている姿。そんな3人の中にいる自分。どうして、彼らはそう…
「あんた達といい、委員長といい、つくづくバカに弱いのよね。私」
ほんの僅かではあるが、蛍は普段滅多に見せないような穏やかな笑みを浮かべていた。
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未来(プロフ) - 七瀬あおいさん» コメントありがとうございます!お気遣いまでしていただいて有り難いかぎりです。引き続きよろしく読んでいただけると嬉しいです。更新頑張って参ります! (2021年7月29日 15時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬あおい(プロフ) - このシリーズとても大好きなので更新めちゃくちゃ嬉しいです。これからも未来さんのペースで構わないので頑張ってください。 (2021年7月24日 22時) (レス) id: 56c81eaebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2021年5月20日 0時