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「あと3〜4年したら、俺と今よりず〜っと仲良しになろうな」
「?、いいよ」
「…その前に、明良くん。明日を迎えられるの…?」
Aは殿内の背後に立つ翼が振り上げているトンカチを指さして見ながらそう言った。
殿内は性懲りもなく蜜柑に近付いては何やら危ない誘い言葉を掛けていく。
翼はそんな彼に対して、野田に止められるもトンカチを振り下ろすも易々と片手で受け止められた。
「そういや棗っていえば、あいつ身体大丈夫なの?」
「え…?」
事も無げに紡がれた言葉に、Aの動きを止まって顔が僅かに曇る。また彼の身に何かあったのかもしれないと不安でしかない。
しかし、自分ではどうする事もできない事だと重々承知している。その悔しさから唇を噛み締めた。
「……体?」
「最近病院通いしてるって聞いたからどっか悪いのかと思って。ちがうの?」
「え…ウチ、何も知らん…。だから、最近様子おかしかったんか?Aは知ってた?なぁA、」
「……っ…、」
問いかけてみるも様子がおかしいAに口を閉じた。蜜柑は、返事をせずただ俯く彼女を見つめていた。
確かに前にも入院はしていたが彼の具合がそこまで酷いとは思っていなかった。
…まさか、棗に限ってなー…そんなん……
数日前に出会った能力を使う度に寿命を縮める形であるかなめを引きずりすぎと、蜜柑は首をふるふると振って考えを拭った。
そんな二人を黙って見つめる野田に気付く事はない。
「そーいや、殿先輩。
“アリス紛失事件”の話、何か知ってる?」
「ああそれ…俺もそのせいで急きょ仕事キャンセルさせられたんだよなー。んで、今ここにいると…」
「中等部にアリス紛失者が出たって本当?!」
「え」
ぎくりとした。その所為で手に持っていたポットが揺れカップから紅茶がはみ出してしまった。
「おしえて──っっ!」
「えっ、中等部生に紛失者?!うそー」
不安そうに殿内に訊く翼達中等部生。学園内に紛失者が出たという噂を知らなかった蜜柑は隣で驚いた。
や、やっちゃった…。
幸いにも全員が殿内の返答に夢中で小さく呟いた言葉は聞かれていなかった。
その隙に零れた紅茶やソーサーを拭きながら横目で皆の様子を伺った。
殿内は野田が生徒にバレないように、後ろで出している合図に気が付く。野田は口元に人差し指をあてた。
その意味を素早く察した彼は、咄嗟に嘘をついた。
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未来(プロフ) - 七瀬あおいさん» コメントありがとうございます!お気遣いまでしていただいて有り難いかぎりです。引き続きよろしく読んでいただけると嬉しいです。更新頑張って参ります! (2021年7月29日 15時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬あおい(プロフ) - このシリーズとても大好きなので更新めちゃくちゃ嬉しいです。これからも未来さんのペースで構わないので頑張ってください。 (2021年7月24日 22時) (レス) id: 56c81eaebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2021年5月20日 0時