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棗はペルソナの言葉に息を呑んだ。



────こいつは嫌いだ。
何を考えてるか分からねえ所も…





「…最近のお前が以前のように荒んだ目をしなくなったと…その原因をその目で確かめてこい、と」





奴は余裕の笑みを浮かべて、変装を解いていく。





「ついでに、お前が最近よくつるんでる、毛色の違った小猫達についても知っておこうと思ってね…」



「何の事だ…」



「…くっく…なかなか楽しかったよ。
まさかお前が、しおらしく席に座って試験を受ける姿を拝める日が来ようとはな…」





小さく笑みを浮かべた。しかしその笑みは冷笑だ。見るもの全てがぞっとする程の嘲笑や貶みが混ざった笑み。





「試験なんて受けても、お前には何のメリットにもならないだろうに。

お前には、とうに帰る家も家族もなくなってしまったんだからな」





“お兄ちゃん”…

“お兄ちゃん”………






こいつの言葉1つ1つが俺の胸に突き刺さる。
心を体を全てを抉られるような感覚。


耐えられるわけがねえ……
…どんな手段を使ってでも俺を貶めたいのかよ。





「校長はこれ以上、飼い猫(お前)お気に入り(・・・・・)が増える事を、好ましく思っていない。
特に、“毛色の違った子猫”なんかは…」




「……それはそっちが勝手にパートナーにっ、」




「それは校長の本意とは違う」





お気に入りが増えるだなんて誰のことを指しているかは別として、自らに調子に乗るなと警告を与えにきた。





「それと…Aの事を校長は酷く気に入っている、」




「何だとっ、」




「璃音がいないのも同じ事だ。
──────この意味が分かるな、棗」





酷く冷たい声で名前を呼んだ。





「校長はあのアリスを持って生まれた璃音を一生手放す気はないと仰っている」





呪いのような言葉だった。
この場に初校長(あいつ)はいないはずなのにまるでこの場にいるかのような。


奴の声が聞こえてくる気さえした。地を這うような声が待ち構えている気がしたのだ。





「せいぜい気をつけるんだな」





奴が葉に手を下すと、葉は枯れて灰になった。


立ち竦む俺を見て細く笑った。ゆらりゆらりと読めない幻影のように消えた。


後夜祭の後、璃音は突然消えた。俺に言ったあの言葉と璃音が消えた事が繋がった。


何かを耐えるように少年は瞳を閉じた。
少年がその赤い瞳を開けた時にはもう、その瞳には何も写っていなかった。

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未来(プロフ) - 七瀬あおいさん» コメントありがとうございます!お気遣いまでしていただいて有り難いかぎりです。引き続きよろしく読んでいただけると嬉しいです。更新頑張って参ります! (2021年7月29日 15時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬あおい(プロフ) - このシリーズとても大好きなので更新めちゃくちゃ嬉しいです。これからも未来さんのペースで構わないので頑張ってください。 (2021年7月24日 22時) (レス) id: 56c81eaebe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未来 | 作成日時:2021年5月20日 0時

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