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「先程の質問の返答ですが……
今回は、ちょっと興味深い
悶々と考えていれば掛けられた言葉によって鳴海は我を取り戻した。
「お、未来ですか?」
茶化して聞けば何時になく真剣な表情を浮かべた野田。腕に付けたブレスレットを掲げながら再び口を開く。
「…実は時空の乱気流ってやつに、のみこまれてしまいまして。それが巧を奏したのかその時、この制御ブレスがうまく作動しなくなって」
そこで、掲げていた腕を下ろした。真っ直ぐに見つめてくる彼の真剣な表情に、鳴海も自然と笑みがなくなる。
「おかげで、かねてから行きたいと、常々目指していた核心の時間の近くに、ようやく行くことができました」
「え…」
ザ…と2人の間に風が強く吹いた気がした。
呼吸も忘れて瞠目結舌し、立ち尽くすしかなかった。
漸く絞り出せた声はいつもより上擦っていた。
そんな鳴海の様子を静かに見つめる野田。暫しの沈黙が2人を支配した。その空間だけが、時間が止まったかのように静かであった。
「のだっち、まだ来てないの?たくも──
何やってんだか、あれで教師がつとまるとはね!」
「ボコボコにした張本人がよくいうよ」
「愛だよ、あ・い♡」
Aが特力の列に並んだ頃。辺りを見渡しても見つからない野田の話をしていた。蜜柑は冗談だった彼の永眠を真に受け、お位牌を持っていた。
「蜜柑、野田先生はちゃんと土から還ってきたよ」
「ほんまっ!?よがっだぁ〜〜…」
「お──い、のだっちや──い、どこいった──?」
今現在も鳴海と話している事はA以外、誰も知らず。彼女は怪訝な表情をして彼の不自然だった様子が脳裏に浮かび、考えを巡らすのであった。
「…まあ、近くといっても、
あの“核心の時”から約1年後ほとでしたが…」
「あ…」
再び野田が話し始める事で、その時間は動かされた。
「そこで“あの
吹雪の中、何かから逃げるように、彼女は生まれて間もないカンジの赤ん坊を抱いていて、その子を“ミカン”と呼んでいました」
“ミカン”“ミカン”“ミカン”…
「それから、もう1つ見たものが…
金木犀の香りが漂う小道を、生まれて間もない赤ん坊を抱いて逃げる“彼”の姿が。
彼はその子を“リオン”と呼び、ベンチに置いて走り去りました」
"リオン” “リオン”"リオン”…
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未来(プロフ) - フリージアさん» ご指摘ありがとうございます。訂正させていただきます。より良い作品になるよう心掛けておりますのでこれからもよろしくお願い致します (2020年11月12日 12時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
フリージア - いつも更新楽しみにしています!誤字かな?と気になったところがあったので報告失礼します!159の「かくゆう」、 165の「見るに来るのが楽しみだった」「みんなの舞台を台無しにしなくないっ……!」「お客さんもこの舞台を楽しにして待ってる……!!」 (2020年9月20日 17時) (レス) id: f10b12f88b (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - きゃーぽんさん» 率直なコメントで励みになります!ありがとうございます。随時更新して参りますので、よろしくお願い申し上げます。 (2020年9月13日 1時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白くて好きっす (2020年9月5日 15時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2020年8月29日 0時