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「Aっ！しっかりしろ！A！」
遠くで璃音くんの声が聞こえる。多分アリスを使った事でシールが破裂しちゃったんだ。
《体育祭総合優勝は……紅組…っ！！》
審判の人の声を最後にあたしは意識を手放した。あたしの右手にはさっきよりもかなり大きなアリスストーンが握られていた。
あたしの様子を見ていた初等部校長が目を見開き、腰を上げた事を、その口角を吊り上げた事を、あたしはまだ知らない。
月は月で必死だった。自分に掴みかかって離さないAに舌打ちをする暇もない。
小さな身体を駆使して彼女の腕を引っ張って、そのままアリスを使おうと首元に唇を寄せていく。
その瞬間、Aは防衛のために能力を使ったのだろう。音のアリスと“体内にある盗みのアリス”、そして月の吸魂のアリスがぶつかり合ったのだ。
「Aっ！しっかりしろ！A！」
「A、気失ってる…」
「今…多分、
「…小泉さんは？」
「彼女も失神って何で…落ちた衝撃で？」
「いや…どうも、いつの間にか彼女も３カウントシール分以上のアリスを使ったみたいで。白崎さんと同様に」
「え、彼女がいつ…？アリスを４回も…」
そこで皆の視線が一気に月へと向く。彼女のスリーカウントシールも破裂しており、その謎に首を傾げている。
「ねえ、小泉さんが倒れたらゲーム終了なんだよね？」
心読み君が気の抜けた声で審査員にそう訪ねた。審査員の人間達はその言葉にハッとして得点の計算を始めた。
《えっと…今の両組のカウントシール違反のペナルティ点を引いても…騎馬戦は紅組の勝ち…
体育祭総合優勝は………紅組…っ！！体育祭優勝は紅組です！！》
体育祭の結果が出て盛り上がる中、各部の校長は各々の思いを内に秘め、目の前の光景を眺めていた。
３人の視線の先には気を失った月とA、その近くに立つ蜜柑の姿が。
「これはこれは…どうやらこの先、ややこしい事になりそうだこと…………我が身に余計な火の粉が振りかかってこなければよいけれど…」
姫宮は扇で口元を隠しながら呟く中、隣に座っていた高等部校長は沈黙を守り続ける。
表立っては冷静な２人とは対比的に、初等部校長は目の前の光景をぎらついた瞳で食い入る様に見つめていた。そして、控えていた人間に指示を出す。
「…鳴海先生を。鳴海先生を呼びなさい。彼に確かめさせたい事ができた」
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
