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少し離れた所でAを見つめていた蛍が自分の乗っているメカを操作する。
メカから腕が伸び、それがAの襟元を鷲掴んだ。
「…え。え、何、」
「ちょっ、蛍？！Aころす気か──っっ？！」
状況を理解するよりも先に持ち上げられた体はそのままポーイっと放り投げ飛ばされる。
「ま…や────っっ！」
騎馬である璃音達が必死で追いかけたために、失格にはならずに済んだけれども、放り投げられるという恐怖を植えつけられたA。
「し、心拍数が…っ」
突然の事に騎手も馬も、未だに心臓がバクバクと激しく脈を打つ。息を整えながら犯人である蛍を凝視する。
「ほた…っ！」
「……ぶっ飛ばすんでしょ？思いっきりね」
「……！！」
全てを無視して、紡いだのは背中を押してくれる言葉。Aの気持ちを汲み取って、いつものように後押ししてくれる蛍を見た。
真っ直ぐと見つめ返してくる蛍へ静かに頷いた。
「小泉さん！！いざ尋常に勝負！！」
そしてすぐそこに居る月へと掴みかかる。Aの中で数日前、月に言われた言葉がふと脳裏に蘇って木霊する。
「──教えてあげてもいいわよ。あなた達の恥さらしな出生の秘密。
その代わり、だまること。でしゃばないこと。この先、起こる、あなた達とあなた達の周りの被害を、少しでも抑えたいなら」
鬼のような顔でそう告げた
それを守れば、皆には手を出さないって言った。
けど、結果は全然違った。あたしも蜜柑も必死に約束を守った。誰に何を聞かれても、何も答えなかった。
約束を破ったのはあたし達じゃなくて、
もう被害は十分に出てるから。
あたしは貴女を許さない。散々、皆を傷付けて引っ掻き回して、苦しめて、許さない！
あたしは貴女を絶対に赦さない！
「有沙、危ない…っ！！」
あたしは全ての怒りを込めるように襲いかかった。流架の焦ったような声が聞こえた。
小泉さんがあたしの頭を掴んで下に向けて、小泉さんの顔が首に近づいた。
「赦さない！あたしは貴女のアリスを赦さない！！」
掴まれた手を振り払おうとした時、さっきと同じように周りが光った。そして一瞬の内に、パァァン！と何かが割れる音がした。
あたしは騎馬から崩れ落ちて、地面に倒れる。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
