星々の輝き、祈り。16【学園アリス】 (ページ44)

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翌朝、寮を出たAは自分を見上げる小さな物体に首を傾げた。

どこに行っても付き纏われて慣れないベアの行動に頭を抱えているA。

「あたし…ベアにストーカーされるようなこと、したのかな……」

「ベア…昨日のアレで風邪でもひいたんやろか…」

そんな彼女を見るに見兼ねた蜜柑と蛍と委員長は心読み君を召喚する。心読みはベアの前に立つと、フムフム！とベアの心を読んだ。

「Aちゃんて“盗みのアリス”みたいなアリス持ってるって本当？」

まさかベアが爆弾を落とすとは思っていなかったAは開いた口が塞がらなかった。

「ベア曰く、“盗みのアリス”を持ってるAちゃんに、ベアに宿ってる要先輩のアリスを盗って要先輩に返してほしいんだって。そうすれば要先輩はきっと今より元気になるはずだって。

“盗みのアリス”の事は、Aちゃんとが鳴海先生と話してるのを偶然聞いたって言ってるよ」

「A…盗みのアリス持ってるって、何で…」

突然の爆弾発言にＢ組は騒めき出して、訝しげにAを見ている。

ギョッとしたAは蜜柑とベアの腕を掴み、光の速さで教室を飛び出して行った。

そして焦っていた。ベアの心を読んだ心読み君により、周囲に盗みのアリスと同様のアリスがある事を知られてしまったから。

「ベアの、おバカ──っ！あんな所で、皆の前でばらさなくても…っ」

道端にてベアを揺さぶりながらも怒鳴るAを、蜜柑はただ静かに見ていた。

そんなAの様子など目もくれないと言ったように風呂敷を広げて菓子折りと貯金箱を置き、正座するベア。

「違うの、そんな事してもダメなのっ！何してるの？！
あたしはアリスを盗むなんてしない、どうして分かってくれないの…っ

そんな事したって、要くんは喜んでくれないよ！翼くんもそう言ってたでしょ！要くんが悲しむ方法でばかり、頑張らないでよっ！」

Aは泣きそうになりながら説得するが、納得したような素振りは見せないベアを持ち上げた。

「……ねえ、ベア。もし、ベアが大怪我をして要くんがアリスを使ってベアを直してくれたら、どう思う？」

「！…………」

「“自分のために命を無駄にしないで”って、優しいベアならそう思うと思う」

ベアにとって要がとても大事なように、要にとってもベアがとても大事な存在であることを、ベアにはわかってほしいから。

「今、要くんはそう思ってるよ」

与えられた命を返すよりも、与えられた命を全うする事の方が尊く、でも、とても難しい。