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初等部には、大至急だとAに呼ばれた翼の姿があった。
「だって…ベア乾かして、いきなり元気になって、殴りかかられたら嫌やもん」
「クマ語マスターだから」
「いけにえ」
「雑用係」
蜜柑、委員長、心読み君、蛍がそれぞれの理由を声に出した。若干２名は、理由としては何とも言えないものだった。
「よーしベア。乾いて元気になったら、あいつらいっぺんしめてこい。俺が許す。ベア語は心読みもルカぴょんも分かるだろーが…」
翼も翼で大人げなかった。至極面倒臭そうな顔をしていたものの、ベアを乾かした。
「よし！乾いた〜！！」
「…あれ？ベア…何か元気ないな。いつもと違う…」
「おっかしーなー、ちゃんと乾いたはずなんだけど」
乾いたベアは大人しかった。てっきり蜜柑に殴りかかるくらいはするだろうと思っていたが、ちょこんと座っているだけだ。
「あ、ベア！どこ行くつもりだ、おいっ！また濡れるだろーが！」
それどころか、またいきなり外へと飛び出そうとして、翼に掴まっている。
「A、こいつどこで倒れてた？」
「え、と…病院前、」
「…病院？」
「何でそんな所におったか知らんけど…翼先輩？」
病院という単語に何かを考えるように動きを止めた翼。その様子でAも大体、想像がついてしまった。
きっと要に何かがあったのだろう。案の定、翼はすぐに口を開いた。
「要先輩の容態が悪いの！？」
「要くん…だから目黒先生、あんな事……」
「まあ…去年の冬あたりから、ずっと調子は良くなかったみたいで、この梅雨の間に風邪こじらせて…」
本格的に梅雨入りして雨が続くこの頃。集中治療室には要君の姿があった。
最近、目を覚ましている事の方が少ない、との事。要の担当医である目黒が教えてくれた。
「今は最悪の状態からは脱したらしいけど、相変わらず状況は厳しいみたいで」
ガラス越しで眠ったままの要を見つめるA達の間に沈黙が流れる。空気はどこか重かった。
「…医者が言うには、今年の冬越せるかどうか、難しいとこだって…ベアもその事気がついて、いても立ってもいられないだろうけど」
傘をさして立つAの表情はどこか暗く、ベアは病院の
前から動かない。先程と違ってレインコートを着ているから雨に濡れないものの、それでもずっと立っていたらまた倒れることは間違いないだろう。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
