778・学園生活編 ベアと要の話 ページ41
自分と鳴海の様子を誰かが見ていたなんて、Aは気づかなかった。
一応、大事を取ってAは病院へと連れて行かれた。容態は、特に問題はないらしい。
そう言ったAの担当医である目黒の言葉に鳴海は安堵した。
「まったく！３日も意識不明で、もしかしてシャッフルの後遺症で魂が身体に戻れなくなったのかと思ったら、ただ寝こけてただけですって！？」
「えへへ…ごめんね、皆。心配かけて」
「わざわざお見舞いに来た私達の立場は一体っっっ！何なのよあんた！？」
「まーまー。何事もなく無事で本当によかったよ、Aちゃん〜」
般若の顔で叫ぶスミレに、Aは照れたように笑った。
蜜柑は流架と共に苦笑いだ。
鳴海とのいざこざの間に、シャッフル香事件の被害者であった皆は無事に元の身体に魂が戻ったようだ。
とりあえず一件落着ということになった。ちなみに鳴海に関してはというと。
「Aちゃん、秘密にできるかい？アリスの事。
君のアリスは特殊なんだ。もし今回の件が発覚しても、なるべくアリスを使わないで欲しい」
「…え、アリスを使わないって…」
「強い想いを声に出さないようコントロールして欲しいんだ…」
「…え、でも、なんで…」
「今は何も聞かないで、約束して欲しい。
何より君のために………」
「…分かりました…鳴海先生っ、あたし…」
鳴海はそう言って、次の日からまた、A達の前に姿を現さなくなった。
“音のアリス”がどうして人に露見してはいけなくなった
のか、Aは鳴海の言葉に頷きはしたものの、その本意は理解していない。
「……、ぐにっ？！」
突如ぐにっ、と足元から凄まじい音がして、Aは恐る
恐る下を向いた。そして自分が何を踏んだのかを確認すると、自分が知っているモノで驚いた。
「え、ベア！？」
「うそー…！！」
とりあえず倒れていたベアを寮に連れ帰って、水浸しで少し外見が変わったベアを机に乗せた。
部屋からドライヤーとバスタオル持ってきて乾かそうとすると、蜜柑達は防衛本能が働いて身構えている。
「皆して、そんなに警戒しなくても…」
「念のため翼先輩を〜っ！！」
「分かったよ」
学園内専用の電話に手を伸ばした。ディスプレイに表示
された名前を確認してから耳に宛がった。
数回のコール後に、凛とした美咲の声が聞こえた。
「だから……何でわざわざ俺を呼ぶ？
Aがいるだろーが」
「ごめんね、翼くん…皆の保険のため、です」
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
