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「普段は大人びている癖に、肝心な所は駄々っ子で子供みたいな杏樹。私は好きだよ。
でも、私の貴方への想いは恋じゃないから」
その言葉だけを聞いたら、とても残酷に聞こえるだろうけど、声色や彼女の表情はとても優しかったのを覚えている。
「杏樹。杏樹の恋は、いつだって相手より自分を思ってぶつかっていく恋だね。いつか、そんな執着する恋から抜けられるといいな。
恋って、自分以上に相手の事を想えるようになる事だと思うの。だからいつか、貴方が自分以上に相手を思えるようになることを祈ってる」
言われたその意味が、当時は全く分からなかった。言われた当時は分かろうともしなかったけど。
「きっとその先に、
貴方の望む幸せは待ってると思うから…」
Aがアリスを使い始めた。自らに宿る、盗みのアリスに似た能力に賭けたのだろう。
「………っ！」
やがて鳴海は目を覚まして、どんどん正常になっていく自身の腕に驚きを隠せないでいた。
「な…止めるんだAちゃん！そのアリスを使うんじゃない！」
「な…鳴海先生っ、」
咄嗟に自分の腕をAから遠ざけた鳴海は、初等部校長に言われた言葉を鮮明に覚えていたのだ。
『鳴海先生。
その腕の毒によって、彼女のアリスの可能性を証明してもらいたい。
彼女に盗みのアリスと同様の力があるのか、それを知りたいんだ』
「痣を取りたいなんて考えちゃダメだ！想いを声に出しちゃダメだ！僕の腕の事は放っとくんだ！！」
必死にそう訴えかけられても、Aは止まらなかった。遠ざけられた鳴海の腕に必死に縋りつく。
「止めろって言ってんだ…！」
あまりに頑なAの態度に、鳴海は彼女に手を上げた。
頬を打たれたAは涙が出るも、鳴海を睨みつけながら手を伸ばす。
「……っ、止めない！絶対に止めない！！
鳴海先生が死ぬなんて嫌！あたしの…皆からいなくなるなんて、そんなの嫌！！絶対嫌だっ！！！」
鳴海の腕に巻きついて、必死にその力を使って叫ぶ。
「殴りたければ殴れば良い！あたしのアリスで鳴海先生が助かるなら、何が起こっても構わない！！」
Aの頑なな声と態度に、思わず目を瞑った鳴海。脳裏に浮かぶ茜の姿を忘れることは、きっとない。
「お願いよ、杏。子供達を、守って…」
「絶対に、絶対に、諦めない！！
可能性がある限り、あたしは絶対に諦めない！！！」
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
