星々の輝き、祈り。16【学園アリス】 (ページ38)

今日:35 hit、昨日:8 hit、合計:4,781 hit

775 ページ38

「………鳴海先生？」

神野はAよりも、様子がおかしい鳴海を視界に映す。先ほどから鳴海の息が荒く、汗も凄いのだ。

何かがおかしいと感じ取ったAは、急いで鳴海の手を包む手袋を剥ぎ取った。

「｢……っ！！｣」

その手が黒く変色していた。そして驚愕した。神野が服を捲りあげると、腕が闇夜のように真っ黒であったのだから。そして、その痣にAは見覚えがあった。

「(前見た時は一瞬で分からなかったけど、このアザ…ペルソナの………っ！)」

この痣を忘れるはずがない。Aは歯を食い縛った。

「どうしよう、神野先生…このアザ…あたし、！」

「痣が心臓辺りまで達しかけている…意識もなく、脈も微弱だ…ここまでひどくなるまで、この男…
命の危険が分かっていて今まで何故、隠していた…」

それを聞いたAは、鳴海に向かい合った。

「(先生を助けたい…っ！！

あたしに力があるなら…あたしに、その力があるなら…

盗みのアリスのような力があるなら………

お願い…………っ！！！)」

今ここでごちゃごちゃと考え込んでても仕方ない。今は鳴海を助けるのが先決だと思ったのである。

「白崎っ、私の携帯で救急隊を呼べ！もう心臓が止まりかけてる、事は急を要する！白崎！？白崎…？」

Aは鳴海の右手を抱えるようにして、自分のアリスを発動させてしまった。

「(鳴海先生…っ)」

「ナル、お願いよ」

「子供達を、家族を守って」

柚香先輩、茜先輩。何であの時、あんな事しておいて、あんた達は、僕にあんな願いをぶつけてきたのか。

「子供達の目が曇らないようにお前が助けてやってくれ」

何であの時、僕にあんな事頼んでおいて去ってしまったのか。

いつの日か、茜に言われた言葉を思い出す。

「杏樹、前から言ってたよね。そのアリス(フェロモン)のせいで、今まで本当に自分を好きになってくれた人はいないって」

そこで一旦、言葉を区切った茜の横顔は認めたくはないほど綺麗だった。

「じゃあ、あなたは誰かを、今まで心から想ったことがあるの？」

「茜先輩…」

「杏樹が初めて人を好きになれたことは凄く嬉しいわ。好きになったその相手があたしなのが複雑だけどね」

自分が初めて人を好きになれたことを、複雑な気持ちを交えながらも純粋に喜んでくれた茜。