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「…助け船出してやるんすか？
めんどくさい…」
「まさか」
面倒臭そうな玲生の声に、鳴海は即答で返した。罰則に耐える幼い彼らを横目で見ながら、真横を通り過ぎる。
「縁もゆかりもないガキのとばっちり受ける気なんて、さらさらないよ」
数日前までは生き生きとしていた鳴海の瞳は今、無しか映っていない。
ナル、お願いよ。学園を変えて。
学園に残って子供達を、家族を守って…
柚香先輩、茜先輩。
あなた達の思う通りにはならないよ。
杏樹、お前なら出来るって信じてる。
子供達の目が曇らないようにお前が助けてやってくれ。
理人さん、あなたの言葉は誰にも届かないよ。
「どうせこの学園にいれば、遅かれ早かれ大方が俺らのような濁った目になっていく」
柚香先輩。あの日、あなたの手で空虚な闇に突き落とされて…
そのまま空虚な闇に閉じ込められて、俺の気持ちを理解して笑い飛ばしてくれる茜先輩がいなくて…
闇から這い上がれる言葉をかけてくれる理人さんも、茜先輩を追うように学園から去って…
俺の頭をポンっと叩いて馬鹿野郎と叱ってくれる先生は俺達を置いて逝ってしまった。
「この子らも今、そのプロセス上にいるってだけのことだろ」
３人がいない、先生がいない…そんなに日常のせいで…
この頃の僕は、何もかも本当にどうでもよかった。
「あ、こいつら気失ったみたい」
「…あとは私が処置室へ連れていく、その後の処分も。お前達はクラスに戻りなさい」
自分の後を歩く者達の涙も、当然くらいに受け止めて。
あなた達に沿わず、
真実を自分のやり方で探す方向に心を向けて…
「……く、ない…」
「先生は、悪く…ない……」
そんな自分が、いつからだろう…
あの子達のような迷いのない瞳に
後ろめたさを覚えるようになったのは…
「鳴海先生！」
鳴海はAの手を掴んだまま、離さない。
気を失っているとは思えない力強さに、Aは驚いた。
「ダメだ、先生目開けない…手も離してくれないから、人を呼びにも行けないし…」
「掴んでる手の、その手袋を剥がせば解けるだろうが」
「へ、」
真後ろからの呼び掛けにAはほぼ反射で振り向いた。そして予想外の人物に、またしても驚いた。
「神野先生…」
「変な声がすると思ったら…」
「何で、ここに…」
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
