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後ろの茂みが立てる音がやけに響いた。振り返ったAは見つけてしまった。
「えっ、鳴海先生…？何でそんな所に…？」
大木に寄りかかって、荒々しい呼吸を繰り返す鳴海の姿を。
「鳴海先生っ！」
Aちゃん…君のお母さんである茜先輩は、笑顔がとても綺麗で温雅な人だった、中身を知るまでは…
「ねえ杏、最近の玲生って生意気よね。可愛くない」
君のお父さんである理人さんはとても強くて優しい格好いい人だった、中身を知るまでは…
「何だ杏樹、サボりにきたのかー?」
君の両親は、君には全然似てないよ。性格を受け継いでないって分かった時は嬉しかったな。
このまま真っ直ぐ純粋なまま育って欲しい。そんなこ事を何度も祈ってた。
だけど偶に、本当に偶に口から漏れそうになった。
「鳴海先生ーっ」
Aちゃんは両親にそっくりだ。君の笑顔は僕の元気の源だよ。
そう言いそうになる自分の口を何度塞いだことか。心を何度閉じたことか。
「あたしは奇跡を信じてる。何があっても、絶対に諦めない!」
君から自由を奪って、アリス学園という檻に閉じ込めてしまった。その事実が何年経っても僕を縛り付けて離さない。
「先生……っ」
だから、こんな幻影や幻聴に魘されるんだ。僕の名前を何度も呼ぶAちゃんの声が聞こえる。
これは幻、弱い自分の心が見せているもの──………
「鳴海先生…！大丈夫！？」
大木に背を預けて座り込み、尚且つ顔色がとても悪そうなものだから、Aはすぐに彼の元へと駆けつけた。
必死に呼び掛けるAの声に、漸く双眼を開けた鳴海。
「ああ…Aちゃん、」
「しんどいの、鳴海先生…っ、腕、どうしたの…？」
自分の名前を呼ぶ鳴海の顔は青白く、例えるならまるで死人のようだ。異変を感じ取ったAは、すぐさま立ち上がろうとした。
「誰か、人を呼びに行ってくる…っ」
「落ち着いてAちゃん…
しばらく休めば、すぐに収まるから………
騒がないで………誰にも言わなくていいから……」
誰か人を呼びに駆けようとしたAの腕を咄嗟に掴み、信じられないくらいの強い力で握ったまま、鳴海は動かなくなった。
「……先生…？先生っ！！」
呼びかけても何も返事はなかった。息はしていただが、それもとても微弱なもので。
Aは額に冷たい何かが流れるのを感じていた。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
