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「今井蛍が中等部に殴り込みだってよ──！！」
「すげ──っっ！！お前ら、昼間っからイチャついてる場合じゃねぇぞ！」
「何か中身ベアが乗り移ってんだって」
「何それ──ベア死んだの？！」
「｢………………｣」
ドドドと目の前を中等部生達が走っていくのを見つめるあたし。
ベア…？そう言おうと思ったのに。
今の人達の言葉？え、どういうこと？
混乱するあたしを膝の上から下ろすベア。手錠はいつ間にか外れていた。
「……棗なの？」
もしかして今、隣にいたのって、本当の棗なの？
もし、そうだったら…あたし、告白しちゃったよ、ね…
「…あ、棗っ、聞いて、」
歩き出した棗を呼び止めると、棗は立ち止まった。
「…あたしは、ずっと棗の味方だから、何があっても、味方だから！」
もし今、目の前にいるのが棗ならちゃんと伝えなきゃ。ちゃんと思ってる事を言わなきゃ。
「だから、だから、棗も、棗も…っ、」
次、いつ会えるのか分からないんだもん。
ちゃんと聞きたい事、全部…聞いておかなきゃ。
「…今までの事、棗の事情…全部、言えないなら、それでもいい……でも、これだけは答えてほしい。
棗、貴方１人で、あたし達の前から、いなくなったり…何も言わずに消えちゃうなんてこと、しないよね…？」
離れかけていた棗との距離が縮んで気づけば、棗の顔が目の前にあった。
口には柔らかい感覚。でも、それも一瞬のことで。
「──……いかねぇよ、A…
俺は絶対お前を置いて行ったりしねえ、約束する」
多分、今のあたしは泣いているのか笑っているのか分からない。そんな複雑な顔をしていると思う。
「棗！絶対帰って来てね！あたし、待ってるから！」
棗は一度も振り返ることなく去って行った。去って行く棗の背中を、こんなに安心して見ていられたのは初めての事だった。
「何を考えてるの、璃音君…」
「…ははっ。俺も棗もAを…大切なやつを守る事しか考えてねえよ」
「…そう。じゃあ１つだけ聞かせて。
あなた、Aの元から離れる気なの？」
「…それは、言えない。
けど、考えてる事は蛍と一緒だよ」
「Aには助けてくれる仲間がたくさんいる。
けど、家族はあなたしかいないのよ」
「分かってるって！まあ、大丈夫だよ、大丈夫大丈夫」
───なあ、棗…
こんな事考えたくねえけどは、俺の時間とお前の時間、どっちの時間が先に止まるんだろうな…
どっちが先に、神様から見放されるんだろうな…………
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
