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「でも、兄妹なのに苗字が違うのね？」
「用がないなら、戻るわ」
猫を被った態度を視線に入れないよう踵を返そうとした璃音の腕が力強く引っ張られた。
反動で身体が後ろを振り返ると、目の前には月の顔が。
「そういえば、あんたには忠告をしてなかったかしら？あんたまで
何であんたなんかが
「…っ！」
血が止まりそうになるほど腕を握られて、顔が歪むのを見て狂ったように笑う月。
「あんたが外の任務に赴いているおかげで
白崎Aと佐倉蜜柑、あの子達を監視するのが私の仕事。邪魔しないでくれるかしら？」
腕を掴む力は意外にも強く、なかなか解けなかった。その間にも月の牙は剥かれた。
「……あんたは校長のものよ。
「…はっ、そう思ってんのはお前らだけだよ」
「っ！？」
そう言った瞬間、左頬に鋭い衝撃が走った。
「舐めてんじゃないわよ、クソガキが。あんたみたいなクソガキ、私にかかればすぐにでも“ただの駒”に出来るのよ」
「……っ」
騒がしい声が、打たれた左頬の火照りにひりつくように響く。不気味に笑って月は続けた。
「これは
「大事な、もの……」
忠告はしたわよ、と去ろうとする月の背を睨みつけながら、璃音はコロリといつもの態度に戻して口を開く。
「そっか…そういう事…よーく分かった」
顔を上げた璃音の口角は上がっていた。ニンマリとした笑顔で言いのけた璃音に、月は目を見開いた。
張り付けたような笑みで一歩、また一歩と近づいてくる彼に、思わず身を竦ませてしまう。
「俺さ、基本的に誰がどうなろうと知ったことじゃないんだけど……Aに関しては別なんだよねー」
彼女を守るために周りを捨てるのか。いや違う。彼女が悲しむから、周りも守るのだ。
一瞬伏せた瞼を開いた時、強い光が宿っていた。
「上等だよ。Aに何かあれば、その時は容赦なく潰させてもらうから、そのつもりで」
顔に浮かぶは悪魔のような冷たい笑顔、口から出るのは死神のような毒の言葉。冗談とは思わせない口ぶりに、月は嫌な汗をかいたのだった。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
