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「……で、でも、あんな…たった１回のこと…ただの偶然なのかもしれへんし………何やったんやろ、あれって…」
動揺する蜜柑を眺めて、璃音は漸く言葉を発した。
「…蜜柑は覚えてないだろうけど、花姫殿でペルソナのアリスにやられた時、自力で今回みたいに体内のあいつのアリスを取り出したんだ」
「…多分、蜜柑の予想通り。偶然なんかじゃないわ。
あんたのそのアリスが、あの時のあんたの命とこの間の騒動と、２つを救ったんだから…」
「安積柚香──あの人が蜜柑の母親だなんて……」
蜜柑は呆気に取られたような顔をしていたけど、蜜柑が母から譲り受けた盗みのアリスがその２つを救った事は儘ならぬ事実。
「そっか……
ウチの２つ目のアリス…やっぱりあれはそうなんや」
蛍の複雑そうな表情とは正反対の表情である笑顔を浮かべている蜜柑。
「あれって、何てアリスなんやろ。人の中に入りこんだ他人のアリスを
無効化といい、このアリスといい、ウチって変なアリスばっかり」
「蜜柑…」
蜜柑の笑顔が見れるのは嬉しい。だけど、何て反応していいのか、蛍達には分からなかった。
「“盗みのアリス”」
「え…」
「あ…五島先輩…っ、体質系代表の…」
そんな時、第三者の声で蜜柑の答えに相応しいワードが述べられた。
その声に皆一斉に振り向くと、そこには穏やかな笑顔を浮かべる五島の姿があった。
「勝手に話に入ってスミマセン。
小耳に入ったので、つい…」
「何でここに…、…って買い物か」
五島はAの姿を認めると柔らかく微笑んだ後に、もう一度それを言った。
「さっきの話。君が今、話してたアリスの名前。
“盗みのアリス”と言うんですよ、佐倉さん」
驚く蜜柑を他所に、五島の声だけがただその場に響いていた。
「珍しいアリスの話をしてるんですね。
そのアリス、何か君と関係あるんですか？佐倉さん」
「いえ、別に…」
「そうですか。かゆ…」
「……」
「あ、しまった。伸びた、はぐしゅっ！あ、しまった。伸びた…」
ボリボリと頭をかいて伸びた髪やくしゃみで伸びた口に蛍は目を見開いて、流架は冷や汗を流して引いていた。
五島からハッキリと“盗みのアリス”だと告げられた蜜柑は、どうしたらいいのか分からないのか、その日はずっと黙ったままだった。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
