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中等部の頃に感じた、あの焦りを。
忘れたことのない、初等部校長の興味が自分から柚香や茜に移った時に感じた恐怖。
それを今、彼女達の子供に感じている。
「あの娘達のどちらかは地下に幽閉どころか、一生大事に囲ってやるとも、私のそばで」
『校長!あの娘達はあなたに仇なした九条茜と安積柚香の娘達です。なのに何故、そんなこと……!?』
耐えられなくなった月は思わずそう口にした。否、半ば叫んでいた。恐怖や焦りが月の中を廻り廻って声量すらコントロールできなくなっていた。
そんな月を冷たく見つめて、初等部校長はたった一言を返した。
「任務に戻れ、月。
この間のような失態は二度と見せるな」
冷たい言葉を思い出し、月は唇をギリッと噛み締める。数日前は彼女の周りには人がたくさんいたはずなのに、今ではそれが嘘のように皆、彼女を遠巻きに眺める。
「小泉さんのアリスって…人を変な風に操るアリスって本当？」
「体育祭の時のあの時とあの時のあれ、小泉さんの仕業だって…」
「親衛隊の子達も操られてたって言ってたよ、怖いー」
「蜜柑ちゃんやAちゃんの事、色々変な評判立ったの、そういえば小泉さん来てからだし…」
「あの人って何者なんだろう…」
ヒソヒソと月を噂する声を、Aはただ聞いていることしかできなかった。
「Aちゃん、蜜柑ちゃん」
野乃子が自分達を呼んだ。漢達との握手会を終えたAは彼女に向き直る。
「今日さ、放課後みんなでセントラルタウンに行こうって言ってたでしょ。5･6月生まれのみんなのプレゼント買いに」
「ああ！」
「その時ね、みんなでナル先生のお見舞いを選ぼうってなったんだけど」
「鳴海先生…また今日も休み？今日で３日目だよね…」
「心配だね…大分、具合悪いのかな」
鳴海。最近見ないその姿に、Aも蜜柑も素直に反応を示した。
具合が悪いと学校を休んでいるらしいが、それも今日で３日目だ。そんなにも具合が悪いのかと、Aは担任の体調を心配していた。
「あれ、岬先生？」
ガチャリと扉が開き、ほぼ反射的に鳴海は音がした方向に首を向けた。そこには初等部からの腐れ縁である岬がいて、彼の顔を見て思わず内心で苦笑が漏れた。
眉間に寄せられた皺にお見舞いに来るような顔ではないと思いつつ、自分が原因である事もわかっているから、それを口には出さなかった。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
