番外編 ー宿命ー ページ9
時計を見たら20時を回っていた。宿題を終わらせて寝ようかな、なんて事を思っていたのに。
体は思ってた以上に疲れていたみたいで、あたしの瞼はあたしの意識関係なく閉じていった。
そして夢を見た、とても悲しい夢を。
「嫌よ!」
「逃げろ、お前だけでも、逃げるんだ!」
1人の女の人を、必死に逃がそうとしている男の人がいた。
「嫌…っ、ここであなたの手を離したら、もう二度と、二度と会えなくなる気がする!だから、だから嫌よ!」
「バカ野郎、俺がお前を置いて死ぬわけねえだろ?」
「嫌よ!嫌だよ!……っ、──……!!」
男と女が繋いでいた手が無残にも離された。
目を見開いて涙を流した女に、男は笑ってこう言った。
たとえこの先、離れ離れになって
お前が俺の知らない場所に行ってしまっても
「何度だって、俺がお前を見つけてやる」
だから笑え、───……
俺とお前を繋ぐ唯一の言葉を、絶対に忘れるなよ。
「……っ、」
嫌な夢を、涙が止まらない夢を、心がぎゅうっと鷲掴みされるような夢を見た。急に棗くんに会いたくなった。
「…棗くんっ、」
気づいたら、棗くんの部屋に来ていた。驚いた顔をしながらも、あたしを部屋に招き入れてくれた棗くん。
「…こんな遅くにごめんなさいっ、」
いつも震えている、あたしの声。棗くんを前にすると、上手く話せなくなる。
けど、今日は全然違う理由であたしの声は震えていた。
「…お前、何かあったのかよ」
普段とは違うあたしの異変を、棗くんに気づかれちゃうくらい、あたしは動揺していた。
「怖い、夢を見たの、怖くて怖くて、悲しい夢…っ、」
「…夢?」
暗闇の中で、手を求めていた
「あのね…棗くん…家族もいない学園で、独りぼっちのあたしに居場所をくれたのは仲間だったの…」
森で貴方に出会った
「初めて棗くんを見た時、棗くんと北の森で話した時、あたしは棗くんに“勇気”と“強さ”を教えてもらった」
月日は流れ流れて、池の畔で貴方と出会った
「…再び棗くんに会えた時、運命だと思った、」
もう考えることはないよ、2人でいればいい
「…ずっと、棗くんのそばにいたいと思った」
もう怖がることもないよ、2人でいればいい
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未来(プロフ) - 感想ありがとうございます!完結までまだまだ先は長いですが精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (9月5日 19時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 更新待ってました!これからも楽しみにしているので頑張ってください! (9月5日 8時) (レス) id: 7447c314b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年7月24日 10時