647 ページ7
そのうち談話室でのパジャマパーティーに移行して、消灯時間寸前まで続いた。
４〜５時間ほど続いたお別れ会は、体感的には一瞬で終わり。
学園最後の夜、星野はずっと笑顔を浮かべていた。
「よかったね、ほっしゃん」
「明日とうとう家族に会えるんだね、よかったね」
──大きな不安はたたいて くだいて
心のポケットに深くしまって……………
自室へ帰ってベッドに潜り込んでから抗うように、うだうだと目を閉じずにいたのに、いつの間にか眠りこけて朝がきてしまった。そして今、正門の前にいる。
星野の見送りには初等部生と特力生、鳴海に野田、その他にも初等部の先生が何人か立ち合っていた。
「ほっしゃん、元気でね」
「手紙書くからね」
クラスメイトからの言葉に星野は頷くが、表情はどこか固い。花に顔を埋めるようにして小さなブーケを抱えている。
皆でお小遣いを出し合い、花屋で作ってもらったブーケの花の色は明るく、明るすぎて、星野の晴れない表情をより目立たせるようだった。
「ナル、ご家族は」
「…まだみたいだね。
連絡はちゃんと届いてるはずなんだけど………」
鳴海と岬が不安げな表情を浮かべていた。
退学になってしまった生徒が学園を出る時は、大抵その迎えは学園が指定した時間よりもずっと早くにくる。
我が子が正門に到着するよりも先に、門の前で待つ人も多い。でも、星野の家族が現れる気配はなかった。
大丈夫かな。
虹、ちゃんとだせるかな…
“みんなからもらった
うれしいこと たのしいこと……………”
幸せの形にして、みんなに……
「ねえ、ほっしゃんの家族どこ？」
「さあ…」
未だに迎えが現れない事に周りがざわつき始め、不安が反映されたように、空には黒い雲が立ち込める。
「あれ…」
「雲行きが…」
「…ほっしゃん」
雨が降り出さんばかりに空が黒く染まる。手に持つお面で表情を隠しているけど、星野の表情は不安げだった。
「保志雄！」
「母さん、あそこ…っ」
「無理なさらないで下さいよ」
車からバタバタと慌ただしく人が降りてきた。女の人と男の人、それに看護師さんらしき人。
「あれってほっしゃんの…？」
「それに看護師さんもいる…最近ほっしゃんへの手紙が届かなかったのって、お母さんの体壊してたからか…」
細い声を精一杯張りあげて、母親が星野の名前を呼ぶ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未来(プロフ) - 感想ありがとうございます！完結までまだまだ先は長いですが精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (9月5日 19時) (
レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 更新待ってました！これからも楽しみにしているので頑張ってください！ (9月5日 8時) (レス) id: 7447c314b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未来 | 作成日時：2023年7月24日 10時
