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「蛍ちゃんっ」
「ちょ…今井さん?!」
「棗!」
「ちょっと、ルカ君と璃音君までどこいくの〜?!」
パシと乾いた音がした後、蛍は走り出した。そんな蛍を見て棗や流架、璃音も続いて走り出した。
「日向棗、今井蛍、乃木流架、日下部璃音…」
走り去っていく彼らの後ろ姿を見て不穏な空気を漂わせながら、月は呟いていた。
「A。お前、櫻野達から何か言われたりしたか?」
「そういえば、“君と佐倉さんは風紀隊に絶対捕まってはいけない、必ず守れ”って…」
「(…つ、捕まってしまった……………!)」
「(どどど、どないしよA……!!!!)」
新学期が始まって数日が経った頃、実習生としてB組に来た秀一と昴にそう言われたことを、Aは思い出していた。
忘れていたわけでは決してない。蜜柑だけは、蜜柑さえ捕まらなければ、と必死に守ろうとしただけだ。
Aと蜜柑は黙ったまま風紀隊の男に腕を強く引かれ、廊下を歩いていく。
「失礼、風紀隊No.18の方ですか?」
後ろから風紀隊の格好をした男が2人の手を引く風紀隊に声をかける。
「………そうですが?」
「職務中失礼します。自分はNo.50です。本部委員会の方であなたに呼び出しが」
「え、私ですか?」
「はい、代わりに私が職務を引き継ぐように言われて」
Aは風紀隊の人間達が話していることにあまり興味が湧かなかった。これからどうなるのか、どうやって皆を守っていけば良いのか、それらばかりを考えていた。
「この子を連れて行けばいいんですよね?」
「あ、はい。よろしくです」
どうやら今話しかけてきた男が自分達を連れて行くことになったらしいが、それさえも関心がなかった。
ここまで連れてきた男は2人を引き渡して、足早にその場を去った。
「櫻野さんに言われませんでしたか?風紀隊には絶対に捕まってはいけないって…」
「…え……誰、」
男が発したその言葉により、Aの思考は奪われることになった。知ったような口ぶりに、上を仰ぐ。
男かアイマスクを外しても、やはり知らない顔に眉間に皺が寄る。
「はは…分からないですよね。
アリス使用中にお会いした事はないですから」
ぐにっ、ぐにゃ…ゴキグギ…ぐちゃ…ブスン…
むにょ、ぐりぐりぐりゴリゴリ…プシュ〜…バキッ
顔や体をいじり始め、まるでかき混ぜるようにしていく男に頬が引きつった。
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未来(プロフ) - 感想ありがとうございます!完結までまだまだ先は長いですが精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (9月5日 19時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 更新待ってました!これからも楽しみにしているので頑張ってください! (9月5日 8時) (レス) id: 7447c314b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年7月24日 10時