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頬をあたった小泉さんの手が異常に冷たくて、あたしを見る小泉さんの瞳は憎しみで満ち溢れていた。
「その髪その顔その目…私から大切な人を奪っていったあの女の、あなたの母親を思い出してイライラするわ」
小泉さんの言葉に固まった。お母さんが小泉さんに何をしたというの。小泉さんから何を奪ったというの。
「あんた、何言うて…」
あたしの後ろで固まっていた蜜柑が意味が分からないと声をあげた。
小泉さんはあたしへの興味を失くしたと言わんばかりに蜜柑に向き直った。
「まったくわけ分かんないって顔ね、佐倉さん。
あなた、本当に何も知らないのね。
嘘だと思うなら、教えてあげてもいいわよ。
私が知ってる白崎さんと佐倉さんの両親のこと」
異常。そう思うほど小泉さんの顔は黒くて、怪しくて、恐ろしくて。
「人には言えない恥さらしな、あなた達の出生の秘密」
肩に置かれた手さえも恐くて震えてしまう。小泉さんはあたし達を見て、またクスクスと笑い出す。
「気が向いたら、だけど。勿論、あなた達が私に対していい子で、今日見た事聞いた事を一切、他言しなければの話だけれど。
まあ、他言したところで今のこのクラスじゃ、あなた達の言う事、どこまで信じてくれるか怪しいわよね。
くすくす…もちろん、教師もね…」
その時だった。蜜柑のすぐ後ろにある扉がドンドンと音を立てた。
「蜜柑、A、そこにいるの?」
「Aっ、蜜柑っ!」
「ほた…りお、ん…」
声からして蛍と璃音くんだろうか。蜜柑は早くここから逃げ出したい一心で扉へと縋りつく。
「白崎さん、佐倉さん。出生の秘密にしても、私をどう敵に回すかも今後のあなた達次第…白崎さん、あなたは賢いから、もう分かるわよね?私の言いたい事…」
「…ぇ…っ…ぁ、」
その言葉に、あたしの肩がピクリと跳ねる。この状況が恐怖でしかなく、堪らなかった。小泉さんはそれを分かってか、冷たく鋭い目を向けてくる。
「例えば、さっきの騒動は準備運動として、これから先起こる、あなた達とあなた達のまわりの被害を少しでも抑えたいのなら、今から言うアドバイスがどれだけ重要か、精々理解しておくといいわよ」
「な…」
小泉さんを見据えたまま、あたしは動けなかった。冷や汗が背中を伝う。
「“だまる”ことと、“でしゃばらない”こと。私は優しいから、あえて教えてあげる。あなた達にどこまでできるかしら」
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未来(プロフ) - 感想ありがとうございます!完結までまだまだ先は長いですが精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (9月5日 19時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 更新待ってました!これからも楽しみにしているので頑張ってください! (9月5日 8時) (レス) id: 7447c314b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年7月24日 10時