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641・学園生活編 幸せの虹 ページ1

消灯時間が過ぎて、ベッドの中でうつらうつらとと微睡む。夢の中を彷徨ってる最中、トントンと控えめな音がして目が覚めた。


中途半端に覚醒した頭で枕元の時計を見る。11時の一歩手前だ。誰だろうか。A組の子か、蜜柑が怖い夢を見て一緒に寝ようとねだりにきたのか。


自分の体温であたたまった布団から出ると、ひんやりとした冷気が足を撫でた。扉に近づき、ドアノブを捻る。


最低限にしか灯されていない廊下の明かりも、真っ暗闇に慣れた目には眩しい。何度か瞬きを繰り返して、目の前の人影が誰だか認識できるようになって、先程の予想が外れていたと知る。





「…あれ…どーしたの?ほっしゃん」





数少ない、たった3人しかいない特力のB組生徒だ。


トレードマークともいえる制御面を今はつけておらず、スケッチブックだけを持っている。仮面はないが、顔を俯かせているから表情が見えづらい。


下から顔を覗き込むより先にスケッチブックに書かれた文字を読み取り、内容に息を呑んだ。





『アリス、なくなっちゃったみたい』


「……ぇ、うそ」





言ってしまってから、慌てて口元を押さえる。彼は顔を上げて、「ごめんね」と唇を動かして悲しそうに笑った。


“子供の時にだけアリスが発生するタイプ”。


決して多くはないけど、“命を縮める”タイプほど少ないわけでもない。それでもほっしゃんがこれに当てはまるとは、つい最近まで思いもしなかった。


だって彼は特力の初等部生の中では一番の古株で、歳は1つ下でも、Aが入学した時にはもう学園にいた。


つまり、特力の教室には当たり前のように、ほっしゃんの姿があった。


ずっとあったものが、急に消えてしまうなんて思いたくなかった。





「……もう、先生達には言った?」





アリスを使った時に異変を感じたり、力が弱まっていると感じた場合は、すぐに周りの大人に相談しましょう。


アリス紛失事件の時だけでなく、長期休みの前や新学期に配られるプリントには、必ず載っている決まり文句。


一時的な不調なのか、本当にアリスがなくなったのかを検査して調べる必要がある。


Aの問いかけに対し、ほっしゃんは小さく首を振って否定した。





「…………明日、一緒に鳴海先生のとこに行こっか」





星野は頷く。目や口元は柔らかい線を描いているけど、どこかぎこちなく強ばっている印象を受けた。


アリスがなくなっておらず、単なる不調の可能性はどれだけ残されているだろう。

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未来(プロフ) - 感想ありがとうございます!完結までまだまだ先は長いですが精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (9月5日 19時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 更新待ってました!これからも楽しみにしているので頑張ってください! (9月5日 8時) (レス) id: 7447c314b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未来 | 作成日時:2023年7月24日 10時

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