星々の輝き、祈り。10【学園アリス】 (ページ49)

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「(男子トイレがねえ…)」

男子トイレを探すが全く見つからない。男子禁制の花姫殿には男性専用の物は設備されていないのだろう。

根気よく探していた棗も余りの見つからなさに苛立ちが達してきた時だった。

「雪葵様のお加減が…」

ふと、向こう側から小さく聞こえてきた声。何やら女中のような女が２人、小声で何かを話している。

「では、これを一緒に下へお持ちして。それでもぐずられるようなら、主治医に連絡を」

１人の女は、もう１人に薬のようなものを渡す。

「今日は新年会で人の出入りが多いからくれぐれも下に降りるところを部外者に見られないように」

「はい」

────”雪葵”…？

薬を渡された女は地下に繋がる扉を開け、音もなくそこへ入っていった。

棗は付近に人がいなくなったのを確認すると、その扉に近づいた。扉の中は真っ暗で、下り階段が続いていた。

その先で、呼んでいるような気がしたのだ。

「…お兄ちゃん、たすけて

お兄ちゃん、お兄ちゃん…」

「(ここは…)」

『くれぐれも、案内された場所以外に足を踏み入れたりしないように。何が起こっても』

────”雪葵“

棗は確信する。雪葵は、きっと妹のことだろうと。そう確信してしまったのだ。

「(葵…っ)」

棗は暫く会えなかった妹に思いを馳せながら、長い階段を降り続けるのだった。

「仮面の君。守備通り、日向棗がそちら(地下)へ…」

「わかった、──行け」

ペルソナを含む、４つの影が自分を待ち構えているとも知らずに。

そして、これが仕組まれていたものだとも知らずに。

「A。佐倉とよーちゃんどこ行ったか知らない？」

「…へ？」

Aは先程まで傍に居た場所を見てみると、そこに蜜柑の姿はなく、一緒にいた陽一も見当たらなかった。

「ごめん、ボーっとしてて…」

「大丈夫？」

「うん、ちょっと考え事してただけだから、」

「棗もまだ帰ってこないし。
３人共、どこ行ったんだろう………」

近くに居た先輩達に聞くも、誰も３人の姿を見ていないようだった。

「…どうしたの？」

「蛍」

蛍にも３人がいない事を伝えるとA達は心配し始めた。

「(…あの人なら、何か知ってるかも)」

蜜柑に意地悪く接していた“撫子”お姉様。
彼女なら蜜柑達の行方を知っているかもしれない。